行きあたりばったり銅像めぐり
 10回

 新宿東口のライオン像

 梅雨明けしたばかりの関東地方は、蒸し暑い毎日が続いている。銅像めぐり取材は、勘弁の心境だ。

 こんな時にストックがあるのは有り難い。右は、新宿駅東口の「ライオン像」である。渋谷のハチ公やモアイ像ほど有名ではないが、待ち合わせ用に作ったのではないか。

 ご覧のように、誰かさんが、住まいとして使っている。左奥には洗濯物も干してある。傘など家財道具一式を持ち歩いているようだ。

 銅像ウオッチャーにしたら、ライオン像を撮らねば、次に進まないのだ。「写真を撮っていいですか」と聞いたら、読んでいた文庫本から顔をあげずに、ウンという仕草をした。

 同行のakikoさんは、文庫本を読みふける彼を見て、いたく感動している。なにしろ目の前は、「笑っていいとも」の収録スタジオ「アルタ」がある騒音地帯。そんな中で、マンガではなく、細かい字の本を読んでいるのだ。

 同じ、東口広場に「馬水槽」と呼ばれる像らしきものもあった。赤い大理石で作られた豪華な水槽。高いいただきにある蛇口が、馬用。下のライオンの口は、犬猫用。裏が人間用の水飲み場だ。今でも使えるのかどうか、試してみればよかった。

 明治34年に、ロンドン水槽協会から寄贈されたものだ。19世紀のロンドンには、馬車が走っていた。馬の水飲み場が必要だったのだろう。日本で、馬が利用したのかどうか。その記載はなかった。

 これまで同様、わざわざの「銅像めぐり」ではない。6月25日。「末広亭」で、寄席を楽しんできた帰りである。この日は、思い出していただけるかもしれないが、昼前後に雷を伴う雨が降った。

 「お足下が悪い日に、おいでくださって」と、出てくる落語家全員が言うほどの悪天候だったが、夕方5時頃には晴れ上がり、撮影が出来たのだ。

 同行のakikoさんの息子と私の息子は、中学、高校、大学が一緒。留年も示し合わせたほどの親友だ。息子を通して知り合った友達だが、最近は、息子達より母親の方がたびたび会っている。

 「これからは、和のものにも目を向けようよ」と意見が一致して、そのひとつとして、寄席めぐりをすることになった。ホールで、落語や漫才を聞いたことはあるが、雰囲気の点で劣る。「やっぱり寄席じゃなきゃ」というわけで、まずは新宿の「末広亭」へ。

 末広亭は、「伊勢丹」の裏手にあり、雑多な飲食店が並ぶせせこましい場所に建っている。 
 
 伊勢丹のブランドショップで目の保養をしてきた後だけに、その落差が面白い。

 左写真の中央にある小さな窓が、券売所。右写真は、6月下席(21日から30日)の昼の部と、夜の部の出演者一覧。上席、中席、下席ごとに、出演者が入れ替わる。
 
 上方では漫才が好まれたが、江戸は落語中心だった。漫才、落語、漫談、俗曲、太神楽、紙切りなど出し物は多岐にわたっていたが、江戸の名残なのか、漫才より落語が多い。

 撮影が禁止されているので、内部の様子をお伝えできないのは残念。椅子席以外に、高座の両側に桟敷席がある。江戸時代の寄席の雰囲気を残している。弁当を広げるには、畳の桟敷席がよかろうと、桟敷席に座った。食事をするには都合がいいが、足がしびれてきたので、途中で椅子席に移った。

 昼の部は、12時から4時半まで。夜の部は、5時から9時まで。休憩は入るが、次から次へ20人ほどが登場してくるのに、入場料は2700円に過ぎない。シニアは2500円。これで、昼と夜の両方を聞くことができる。有名な落語家はほとんどいなかったが、皆もちろんプロである。ぜひお奨めしたい。

 よき妻である私たちは、夫が帰る時刻には家路についたが、「次は昼夜続けて見ようね」と、約束した。末広亭のHPをご覧になって、出演者をたしかめてから、いらしたらどうだろう。きっと楽しめるに違いない。(2003年8月7日 記)

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