行きあたりばったり銅像めぐり
 26回

 スメタナ

 メンデルに続き、チェコの人物をとりあげる。右は作曲家のスメタナ像。18・19世紀の音楽家は、教科書に載っているから、なじみがある。「銅像めぐり」をはじめてみると、教科書に出てきた人物は、何気なく頭に入っていることに気づく。学校教育は、ありがたいと言えばありがたい。

 広辞苑には、「ボヘミアの作曲家。1824年〜1884年」とある。括弧でチェコと書いて欲しいものだ。チェコは、西半分のボヘミアと、東半分のモラヴィアに大別されるが、ボヘミアは国名ではない。

 スメタナ像は、ピルゼン市の公園にある。この公園は、城塞をグリーンベルトに作り替えたもの。緑の城塞で囲まれた美しい街だ。

 チェコで丸1日半の自由行動があったので、夫とふたりだけで、ピルゼンを訪れた。プラハからピルゼンまでは、高速バスで1時間20分。ボヘミアの森林地帯を走る。もうドイツ国境に近い。

 人口は16万人と少ないが、、チェコで1番高い尖塔を持つ教会や、世界で3番目に大きいシナゴーグ(ユダヤ人教会)がある。左写真の丸屋根がシナゴーグ。みどころは多いが、ブルノ同様、市電が走りのどかである。

 ここは、言わずと知れたビールの産地でもある。下戸の私でも名前はよく聞く。700年も前からビールが造られていた。ボヘミアの自然が、ビール醸造にぴったりらしい。右上の写真は、ビール博物館の入り口。日本語の説明書を貸してくれた(入場料を払っているのに、パンフレットはくれない)ところをみると、日本人訪問客もあるのだろう。醸造所を改造した展示室だけに、ムードが漂う。
 
 旧市街をぶらついていたら、またスメタナに出会った(左写真)。公園のスメタナと、ここのスメタナはだいぶ顔が違うが、間違いなくその名が彫ってあった。

 2つも像があれば、ピルゼン出身だと思ってしまうが、ガイドブックや、簡単な伝記にその記述はない。ピルゼンが、「ボヘミアの森と草原にて」のイメージにふさわしい地だったのではないか。

 スメタナの代表作「わが祖国」は、@高い城AモルダウBシャールカCボヘミアの森と草原にてDターボルEブラニークの6つの交響詩からなる。

 6つの交響詩の中で最も知られているのは、「モルダウ」だろう。音楽に疎い私でさえ、伸びやかなメロディーが鼻歌になる。モルダウは、プラハの中央を流れるヴルダヴァ川のこと。1年半前の大洪水は、橋をも冠水してしまった。

 「プラハの春」音楽祭は、毎年5月12日(スメタナの命日)に、プラハのスメタナホールで幕を開ける。初日は、「わが祖国」が必ず演奏されると聞いた。今でも国民から絶大な尊敬を集めているようだ。
  
 左写真は、ヴルダヴァ川とカレル橋。カレル橋は両側の欄干に30人の聖人がならぶ観光スポット。橋の上には、似顔絵描きや、楽隊も出る。いつ通っても、身動きが出来ないほどのラッシュ状態だ。遠くに見えるのはプラハ城。「高い城」はプラハ城のこと。

 この景色を眺めていれば、スメタナでなくとも「高い城」や「モルダウ」の交響詩を作りたくなるもだろう。


 最初のスメタナ像があった公園の花壇を、ごらんいただきたい(右写真)。16、8、2003の数字は、訪問した日である。芽キャベツみたいなもので作ってある。日にちの部分は、毎日変更せねばならない。

 観光客がめったに訪れない場所に、手間暇をかけるものだと感心してしまった。ピルゼンでいちばん思い出すことは、スメタナでもなく、ビールでもなく、この花壇を手入れしている人だ。会ったわけではないけれど、勝手に誠実そうなチェコ人を作り上げている。
(2004年1月21日 記)
 
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