行きあたりばったり銅像めぐり
 5回

 伊豆の踊子

 7月12日(土)に、川端康成作「伊豆の踊子」の舞台を、さわりだけ歩いてきた。前夜、伊豆高原に泊まったのだが、いい天気に誘われ、「踊り子コース」を訪ねることになった。4回目の銅像めぐりは、「踊り子と私」の像である。

 「道がつづら折りになって、いよいよ天城峠に近づいたと思うころ、雨足が杉の密林を白く染めながら、すさまじい早さで麓から私を追って来た。・・」

「・・暗いトンネルに入ると、冷たい雫がぼたぼた落ちていた。南伊豆への出口が前方に小さく明るんでいた。」

 写真のように、川端康成が歩いた頃と同じトンネルが、残っている。長さ446b、幅4.2bの小さなトンネルだ。雫がぼたぼたどころか、傘をさしたいほど落ちてくるが、物語の舞台を歩いている・・という満足感から、雫など気にならない。

 もちろん、「銅像めぐり」が目的ではなかった。1年ぐらい前から、学生時代のサークル仲間(学年が少し違う)の暇人女性が「雀ゆう会」と称して、月に1度、卓を囲んでいる。それぞれの夫を誘って、一泊「雀ゆう会」をやることになった。もちろん夫達は、初対面。馴染んでくれるかどうか少々心配したが、8人のうち7人は、同じキャンパスで過ごした仲。会った途端に和気藹々。写真は宿泊した施設の玄関前で。夫婦がくっついているわけではないので、誰が誰やら。

 「踊り子」は伊豆観光の目玉なので、銅像を探すのに、なんら苦労もなかった。前夜に決めた「踊り子コース」ゆえ、下調べもしていなかったが、楽に銅像にめぐりあえた。



















 河津川には、「河津七滝」(大滝、出会い滝、カニ滝、初景滝、ヘビ滝、エビ滝、釜滝)という七つの滝が点在している。ちなみに七滝は「ななだる」と読む。

 大滝が名前のように、いちばん大きく、落差30b、次に大きいのは落差22bの釜滝。「なぜヘビなんだ」「流れはカニらしくないじゃないか」「エビは滝が曲がっているからか」など、新説・珍説をワイワイ言いながら散策した。いずれも、水量が豊富で、なかなか迫力がある滝だった。梅雨時だからだろう。

 左写真は、カニ滝と初景滝との間の道沿いに立っている像。建造年月日は知らないが、真新しい石像だ。

 この像の側に、伊豆の踊子の映画の一覧があった。6回も映画化されている。私は正直言って、読んでもさほど感銘を受けなかったが、ファンが多いのかもしれない。演じた俳優で知らないのは、@の大日方伝だけである。昭和8年だから無理もないが、田中絹代はもちろん知っている。誰がいちばん適役だったのだろう。

@昭和8年 田中絹代・大日方伝  A昭和29年 美空ひばり・石浜朗 B昭和35年 鰐淵晴子・津川雅彦 C昭和38年 吉永小百合・高橋英樹 D昭和42年 内藤洋子・黒沢年男 E昭和49年 山口百恵・三浦友和

 3つ目の「踊り子と私」像は、「浄蓮の滝」に下りる手前の駐車場にある。徒歩でめぐる七滝と違い、ここは大型バスが押し寄せ、観光客で賑わっていた。浄蓮の滝は、石川さゆりの「天城越え」にも出てくるので、観光コースなのだ。河津七滝に比べ、俗化していることは言うまでもない。

 踊り子街道、踊り子茶屋、踊り子レストハウス、踊り子まんじゅうなど、相変わらずの便乗商法だ。

 小説には、浄蓮の滝の記述はないようだが、寄っただろうと推定して、像まで造ってしまうのだ。

 3つの中では、この像の出来がいちばん良いように思う。この像のアップをお目にかけたい。

(2003年7月14日記)

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