ブツブツひとりごと

 私信「北山田だより」の毎月発行から丸15年が過ぎました。15年前に、「ワープロも打てないようじゃ世の中から遅れてしまう」と、あせった私は、目的もないままワープロを購入。いわば衝動買い。そのことを夫はいまだに言っています。「使い道もないのに、高い金出して買うなんて、俺にはわからんね」と。

 有効な使い道がないものかと考えているうちに思いついたのが、ワープロ私信の発行。毎月発行すれば、ブラインドタッチも出来るようになるはず、何よりも新しい世界が開けそう・・と。初期の思惑通りに、コトは進んでいますよ。HPの開設も、この頃の基礎があればこそ。住んでいる町・北山田から発信するので、「北山田だより」と名付けました。

 最初はワープロ専用機を使っていましたが、パソコンを使いだしてからはマック。次第に世の趨勢に逆らえなくなり、ウインドウズに鞍替え。ワープロソフトも「一太郎」から「ワード」へ変更。10年間以上、すべて郵送でしたが、最近では、ほとんどをEメールで添付しています。「北山田だより」15年間を振り返ると、ITの浸透ぶりに驚くばかりです。

 A4で毎月4頁と決めているので、15年間でとりあげたテーマは数知れません。他人様に聞いてもらいたいことを、ブツブツひとりごとを言いながら、キーを打ってきました。その中には反響が多かった話題がいくつかあります。あまり古くない話題を「ブツブツひとりごと」として、HPにも掲載することにしました。「ひとりごと」に終わらせないためにも、みなさんの声をお寄せ下さい。感想をいただけるとメッチャ嬉しいものです。

亭主在宅症候群(北山田だより162号ー2001年9月ーから抜粋)

 最近は、友人宅に電話をかけると、土日でもない昼間にもかかわらず、ご主人の太い声「もしもし」の応答。ハッとして思わず切ってしまいたくなりますが、友達である奥様は、奥におさまっているどころか、外様ばかり。遠慮していたら用件も通じないので、伝言を頼むことになります。

 60歳代前半のご夫婦が、スーパーマーケットで仲良く食材を選んでいる姿もたびたび見かけるようになりました。ことほどさように、年寄りと呼ぶには気がひける、はつらつとした男達が、家にいるようになりました。

 群れている友達の多くが同世代なので「定年後の亭主とのつきあい方」は、おのずと話題にのぼります。「一日中一緒にいられるようになって嬉しいわあー」のはずんだせりふは、聞いたことがありません、「これから20年以上も夫婦だけ!ゾッとするわ」と本音むき出しの人も。

 なしにしろ日本の高度成長を必死で支えてきた世代です。ウイークデーは残業と憂さ晴らし飲み会で午前様、週末は接待ゴルフ。瞬時でも一緒にいたいから結婚したのに、現実はこんなものでした。料理本片手に心をこめて夕食づくりに励んだ頃は帰ってこず、食事作りから解放されたい今になって、朝夕のみならず、昼まで用意せねばならないとは!! なんと矛盾した話でしょう。
 
 山上憶良の歌「憶良らは今は罷らむ子泣くらむそのかの母も吾をまつらむそ」は、子供も母も自分を待っているだろうから、宴会を今退出するよの意味ですが、「万葉集を読む会」で、この歌が出た時は、「待ってなどいないわよねえ。どうぞごゆくっりだわ」の大声が期せずしてあがりました。
 
 夫不在の生活に慣れてしまった主婦達は、自分たちのコミュニティをしっかり作り上げています。そこに突如として、女が遊び歩くことを快く思わず、奥様に徹することを要求する亭主が出現するのですから、なにおか況や。
 
 ま!考えてみれば亭主達もかわいそう。結婚当初の「仕事も家庭も大事にしよう」の志はどこへやら、厳しいノルマ社会の荒波にもまれ、家庭は二の次でした。荒波生活から解放されて、やっと港に停泊できると思うもすでに遅し。「やっとのんびりと好きな事ができる」「今度こそ家庭第一、奥さん第一」も、ひとりよがり。家には居場所すらなく、邪魔者扱い!?
 
 みなさまは「濡れ落ち葉」「粗大ゴミ」「わしも族」「亭主在宅症候群」なる言葉は、もちろんご存知ですね。同世代の男性と次のような会話を交わしたことがあります。

 「濡れ落ち葉には、まだ“もののあはれ”があるけれど、亭主在宅症候群にはドキッ。言語明瞭で突き放される語感だね」「これって冗談でしょ。マスコミがおもしろ可笑しく言いふらしているんじゃないの。本当に主婦は、こんな風に感じているのかなあ」「まあね、あなたがたの奥様が、希有であれば別だけど、一般的には真実よ」。わかってないんだなあ。

 友達の多くは、幸いにも亭主在宅症候群に罹らず、楽しそうに過ごしていますが、居心地がいいかどうかまでは知りません。「主人が朝からでかけてくれたから、○○できるわ」「今日は夕食いらないんだって。ゆっくり出来るのよ」の弾んだせりふを、たびたび耳にします。夫達は、奥さんがこんな会話をしていることを知っているのかしら。
  
 お互いにストレスを感じることなく、心地よく過ごすにはどうしたらいいのでしょう。一人で冷蔵庫を開けることもせず、お金の出し入れすら出来ない殿方がいますが、せめて妻が留守の時は、快く食事や洗濯をなさる男性に変身していただかないと困ります。しぶしぶではダメですよ。進んで喜んでしていただかないと、無理が出るし、不機嫌が顔にも表れます。

 夕暮れのわが家に電気が灯っていると、「ハッとするのは妻、ホッとするのは夫」の名言があります。「男のロマンは女のフマン」なる言葉も。フムフムと同感する女性はたくさんいらっしゃるでしょうね。「男のロマンは女にもロマン」「ハッとしなくてすむ妻」になりたいものですねえー。白川家にも、亭主在宅症候群が他人事ではない日が迫っています。どうなることやら。

反論・同感どちらも歓迎。声を聞かせてください→掲示板

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