泥棒が入った
 (北山田だより167号ー2002年2月ーより抜粋)

 去年の3月30日、わが家に泥棒が侵入しました。泥棒にも3種類あることをご存知でしたか。こんなおぞましい事件がなければ、棺桶に入る前の必須事項ではないのですが、不幸にも、知ってしまいました。

 警視庁に勤務している方から聞いた3種の泥棒は、@ 「空き巣」ー家人が不在時に屋内に侵入して金品を窃取すること。A 「忍び込み」ー夜間に家人が就寝時に侵入して金品を窃取すること。B 「居空き」ー家人が、昼寝・食事などをしているすきに侵入して金品を窃取すること。

 白川家の場合は、丑三つ時の侵入と思われるので、Aです。「忍び込まれた」というわけ。朝6時半に起きるまで全く気づかず、平和に安眠をむさぼっていました。階下に降りた途端に、「あ!やられた」。貴重品が入っている引き出しはすべて開けられ、ひっくり返っていました。「どこから?」と見回せば、大きな出窓が開いたまま。

 「警察よりカード会社や銀行が先だわ」と急いでチェックしましたが、通帳やカードはそのままで無事。集金したばかりの「歩く会」の財布から15,000円。私の財布から約10,000円。他は商品券とビール券で、被害の総額は、ほぼ50,000円というところでしょうか。

 実は、次の日から「歩く会」の韓国旅行だったので、小遣いと家人のために、銀行から100,000円をおろして来たばかり。食卓の上の茶筒に入れておいたのですが、泥棒には「茶筒に現金」の発想はなかったのか、被害は免れました。
 
 朝食を済ませてから、ようやく110番。飛んで来たのは、管轄の交番から2人。しばらくして刑事も2人。刑事が「気づいてから、110番までに時間がかかっているのは何故?」と、鋭い質問。「食事を作らねばなりませんから」「そうか。出勤する人が大事だよね」。

 「ガラス窓が壊れてないから、鍵のかけ忘れか、閉め方が甘かったのかどちらかだろうね」と、この私でも見当がつくことを、あたかも推理したかのごとく、神妙に説明してくれます。

 「それにしても犯人の足跡がないなあ。靴を脱いだのかなあ」「あのー、私が言うのもヘンですが、足跡を残さないように、シャワーキャップを靴につけるそうですよ」「そうか。そんな話も聞いたな」。なんだか頼りないでしょう?でも威圧的ではないのです。

 そんな彼らに親しみを覚えて「実は・・10万円が無事だったの」と、秘密の隠し場所を口走ってしまいました。「ああー、良いこと聞いた。家のカーチャンにも教えてやろう」ですって。つい先日も朝ドラ「ほんまもん」で、愛川欣也演ずるぐうたら亭主が、流しの下にある茶筒からお金を取り出していました。視聴率20%のドラマに出てきたからには、もうこの手は使えません。新たな隠し場所を見つけなくっちゃ。

 「現金しか持ち出してないから、こりゃ相当慣れてるね。ホシはプロだよ」など、ブツクサ言いながら、家の平面図を書き取り、指紋まで採りました。泥棒が触ったと思われる引き出しに、白い粉末状のものをかけて、採取。ここには、犯人よりも、私や夫、もしかしたら子供達の指紋がベタベタついているはずです。
 
 靴の足跡すら残さないような犯人が、手袋もせずに触ったとは思われず、家族の指紋だけが警察のリストに残ってしまったかもしれません。釈然としないものを感じましたが、朝早くから、飛んで来てくれた彼らへの文句は憚られ、ぐっと我慢。

 友達や子供達に話しても「命が無事で良かったじゃない。もし起きてきて、泥棒と出くわしたら大変だった。その程度の金額でよかった」という反応ばかり。誰一人、カンパもしてくれず、同情もしてくれません。その時は、世田谷で一家4人が惨い殺され方をされてからまだ4ヶ月。「それに比べりゃ」ということらしいのです。

 でも5万円も惜しいし、泥棒が歩き回った、家具に手を触れたと考えるだけでイヤーな気分。同じ犯人が「勝手知ったる白川家」とばかり、再度侵入してくるかもしれません。

 ところが、ナント!! 泥棒が捕まったのです。先月・1月中旬に「田園調布警察の者ですが・・」。天下の警視庁のご来訪にドキッとして出てみれば、平服姿の2人。警察手帳を見せてから「お宅に入った泥棒が、田園調布で捕まりました。犯人を連れ回したら、ここだど言いましたし、届けと一致したのです」

 「え!あんなコソ泥が捕まるんですか。警察も案外やるもんですねえ。見直したワー。感激だワー」と、はしゃいでしまいました。考えようによっては、すいぶん侮辱的な発言なのに、「そんなに、喜んでもらってどうも。やりがいがあります」。

 「犯人はどんな人?これからどうなるの?」の矢継ぎ早の質問にも、ていねいに答えてくれました。「41歳の男性。職業は泥棒。懲役で牢屋に入ります。職業に、泥棒があるのは、知らなかったですね。でもわずか10分間の犯行と思われます。時給にしたら、なんと30万円!

 牢屋に入る年数を聞きそびれましたが、出所後に同じ事を繰り返すのは、目に見えています。決して、安心は出来ないのです。それ以後も、この付近の住宅街で、軒並みやられています。白昼堂々の場合もあります。

 泥棒に入られたことは、書くつもりはありませんでしたが、捕まったことが嬉しくて、つい恥をさらしてしまいました。  (2003年8月4日 再記)

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