アメリカの旅2
 グランドキャニオンとモニュメントバレー

2014年5月21日(水)-2日目

 似せエジプト朝日が輝く中、ルクソールホテル周辺を散歩した。ニセエジプト(左)の構築物が、どれも大きくて迫力がある。中国がスフィンクス像を作ってクレームをつけられたが、ここのはあまりにもおもちゃみたいで、クレームの対象にはならないらしい。

出発してすぐ、ラスベガス郊外にゲートコミュニティが見えた。ディベロッパーが、壁を作って安全な住宅群をつくっている。4ベッドルーム、2〜3台入る車庫付きで、バリーヒルズなら2〜3億円もする家が、ここでは2000万円ぐらい。こういう住宅政策のおかげもあって、ラスベガス周辺の人口が増え続け、今は200万人ぐらい。

コロラド川を越えて3つ目の州アリゾナ州に入った。アリゾナの名もスペイン語の乾燥地帯にちなむ。文字通り荒涼とした砂漠地帯が広がっている。ニックネームはそのものずばり、「グランドキャニオン ステート」。

ルート66ルート66の町キングマンで昼食をとった後、セリグマン(左)に寄った。ここに住んでいる人はわずか468人。寂れた町だが、景観街道に指定されている。ルート66のグッズなどを売り、それなりに潤っているようにみえる。ルート66に郷愁を感じない私は何も買わないが、ツアーのみなさんはシャツやプレートを買っていた。

相変わらず乾燥地帯が続く。アメリカ人が住みたくないようなこのような地に、先住民族いわゆるインディアンが閉じ込められている。産業がないので、生活していくのが大変らしい。アメリカ全土には700ぐらいの部族がいるが、政府が認めているのは565。

勝手に他国に入りこんできて、そのあげく前から住んでいた先住民を追い出してしまったアメリカ人。ずいぶん罪深いことをしている。これだけでも罪深いのに、黒人奴隷を購入したことで更に罪深さを増していく。

次に下車したウイリアムスは標高2000m。ラスベガスの標高は500mだからずいぶん登ってきたことになる。ここからグランドキャニオン行の列車が、1日に1回出ている。ちょうど貨物列車の通過に居合わせたが、その長さにびっくりした。

グランドキャニオンのホテルでしばしの休憩後、南側のサウスリムに向かった。前はラスベガスから小さな飛行機で来たが、今回は450qの移動に6時間もかかって着いた。アメリカ横断の旅は、点と点を結ぶ線の部分も見るのが目的なので、長時間は仕方ない。

サウスリムの展望台には、少し場所を変えて1時間半もいた。岩肌は茶色、ピンク、オレンジ色など微妙に違っていてそれが層をなしている。太陽光線の変化を楽しみながら何枚もカメラに収めたが、どこを撮っても似たようなもので、インパクトのある作品は皆無。雪が降るなど異常気象なら、良い絵になるような気がする。

グランドキャニオン グランドキャニオン
 
グランドキャニオンのサウスリム展望台から
 
同じくサウスリム展望台からの景観


「この渓谷は、17億年から18億年前の地層をコロラド川が、長い時間かけて削って出来ました。いろいろ説はありますが、200万年前から500万年前に今の姿になったようです」と説明されたが、数字が大きすぎてイメージしづらい。とにかく、とてつもなく長い期間に全長460qにもなる渓谷が形成された。

東京と大阪間がすべて渓谷になっているようなもので、スケールの大きさが半端ではない。私達はほんの一部を見ているにすぎない。渓谷は岩だけのように見えるが、1750種類もの植物が生育していることに驚く。鳥も355種類、哺乳類も89種類住んでいる。上から眺めただけでは分からないが、自然が豊かなのかもしれない。この日もたくさんの観光客がいたが、年間500万人が訪れる。LAやサンフランシスコから近いだけに納得の数字だ。

グランドキャニオンは、1869年にスペインの地質学者が発見するまでは知られていなかった。国立公園に指定されたのは1919年。世界遺産に指定されたのは1979年。世界遺産第1号12か所のうちの1つだ。奥村さんは「アメリカ人は世界遺産に関心ないんですよ。世界遺産より国立公園に重きをおいています」と話した。「建国わずかのアメリカには、歴史遺産は少ないもんな。国立公園を主体にする気持ちもわかるな」と私はひとりごと。 

                              <グランドキャニオンのキャニオンプラザリゾート泊>

5月22日(木)-3日目

グランドキャニオンの寒さ朝4時45分にホテルを出て、朝日を見るためにグランドキャニオンに向かった。早起きが嫌いなので、日本では日の出などめったに見ないが、絶景と朝日はそれだけで絵になるだろうと、期待は膨らむ。

日の出を待つ30分と出てからの30分は、寒さで震えあがってしまった(左)。昼間との温度差が異常に大きいことは事前に聞いてはいたが、予想以上だった。雲が邪魔をして丸い太陽にはならず、空全体が茜色に染まって終わった。

朝食後、モニュメントバレーへ300q走る。この時間を利用してジョン・フォード監督、ジョン・ウェイン主演の「駅馬車」のDVDを映してくれた。「駅馬車」の原題は Stage Coach。日本では、最初「舞台監督」と訳していたとか。映画を観て、おかしいことに気づき、「駅馬車」に変えたというエピソードがある。

駅馬車これから行くモニュメントバレーは駅馬車のロケ地(左)。「駅馬車」「黄色いリボン」「シェーン」など、若いころは何本も西部劇を見たが、あらすじは覚えてない。西部開拓者の男たちが、最後にはインディアンに勝利するというワンパターンだったような気がする。

あらためて見て感じたのだが、「駅馬車」はワンパターンより奥が深い。アリゾナとニューメキシコ間を走る駅馬車に乗っているのは、酔いどれ医者・娼婦・酒商人・軍人の若奥さん・保安官・お尋ね者のリンゴキッドなど総勢8人。狭い馬車内でくりひろげられる人間模様がおもしろい。アパッチ族の襲撃シーンはクライマックスではあるが、やはり最後は保安官が勝つ。

西部劇が、白人の一方的な見方になっていることが批判され、今では西部劇は制作されていない。駅馬車のDVDもアメリカでは販売禁止。奥村さんは日本で買ったとか。

リンゴキッド(ジョン・ウェイン)と娼婦が去っていく後ろ姿で映画は終わった。同時にバスもモニュメントバレーに到着した。何度もこのコースをガイドしているので、目的地到着と同時に映画が終わるには、どの地でスタートすればいいかを知っているのだろう。こういう細やかな心遣いはこれからも続く。

いつのまにか4番目のユタ州に入った。ユタ州のニックネームは、ビーハイム(ミツバチの巣)ステート。モルモン教徒が最初に住んだが、モルモン教徒はソルトレークに追いやられてしまった。なにゆえだったのだろう。

ネバダ州とユタ州には時差があるので、時計の針を1時間進めた。ややこしいことに、今後2回も時計を直さねばならない。日本のように横幅が狭い国に住んでいると、4つもの時間帯があるアメリカの横幅に驚く。

モニュメントバレーはユタ州にある。モニュメント・バレー・ナバホ族公園の名がついているように、観光、レストラン、売店などの経営はすべてナバホ族でやっている。昼食もナバホ・タコスだった。ナバホ族の皮膚は、灼熱の砂漠に住んでいるためか赤銅色。スリムな人は少なく、どちらかと言うと肥満体だ。西部劇に登場していた勇壮なインディアンのイメージには程遠い。

先住民族には蒙古斑があると聞いたことがあるから、アジア人と同系統なのかもしれない。私たちが親しみを感じる先住民は、以前はアメリカ全土に3000万から4000万人が住んでいたが、今は250万人ぐらいに減ってしまった。

ナバホ居留地はユタ州とアリゾナ州とニューメキシコ州にまたがっていて、北海道ぐらいの広さ。居留地のほとんどが過酷な乾燥地帯だ。ここモニュメントバレーも、乾燥地帯独特の赤茶けた広い荒野に、メサ(テーブル型台地)やビュート(岩峰)が立っている。酸化鉄が含まれているので砂が赤っぽい。メサとビュートが人工のモニュメントに見えることから、モニュメントバレーの名がついた。

モニュメントバレー モニュメントバレー
 
モニュメントバレー

 
モニュメントバレー

初めて見たのにさして感激しないのは、映画や写真であまりにも見慣れていて、何度か来たように錯覚するからかもしれない。とはいえ、ジョン・フォード監督が西部劇の舞台に何度も選んだ気持ちはよく分かる。西部劇独特の荒々しさと切なさにぴったりの雰囲気がここにはある。

フォーコーナーズ次の下車地は、フォーコーナーズ(左)。ユタ、アリゾナ、コロラド、ニューメキシコの4つの州が交わっている地点だ。4つの州が直角に交わっているなど、日本の地形なら考えられないが、砂漠地帯だからこんな線引きができたのだと想像する。中心に立てば一度に4つの州に立ったことになるので、記念写真を撮る人がたくさんいた。

そのまま5番目のコロラド州を走り、宿泊地のコーテズに着いた。コロラド州のニックネームはマウンテンステート。ロッキー山脈のお膝元だから分かりやすい。

今回の旅の宿泊地は聞いたことのある地ばかりだった。でもコーテズだけは初耳。奥村さんが「コーテズは聞きなれないと思いますが、コルテスと言えばおわかりでしょう。アステカ帝国を滅ぼしたコルテスにちなんだものです」と話してくれた。コルテスに代表されるスペインは、メキシコばかりでなくこの辺りにも攻めてきたことを知った。 

<コーテズのベイモントインアンドスイーツ泊>     (2015年6月28日 記)


感想・要望をどうぞ→
次(メサベルデ国立公園とカールスバッド国立公園)へ
アメリカの旅1へ
ホームへ