アメリカの旅9 
 フィラデルフィアとニューヨーク

2014年5月31日(土)-12日目  

今日はフィラデルフィアを経てニューヨークまでバスで移動する。大陸横断していた時に比べ移動距離は短い。16番目のメリーランド州と17番目のデラウウェア州は通過しただけだが、いつものように奥村さんは説明に余念がない。メリーランドは、イングランド女王メアリーからの命名。ニックネームは「オールドライン ステート」。米英戦争の最前線だったことからのニックネームである。

デラウウェアは、デラウウェア川とデラウウェア湾に由来する。建国に加わった13植民地で最初に批准した州なのでニックネームは「ファースト ステート」。50州の中で2番目に小さい。ちなみに、いちばん小さいのはロード・アイランド州。

デラウエア州には産業がデユポン社しかない。デユポンは化学会社として2位の規模だが、1社だけで州の財政をになうのは大変だ。そこでデユポン社は、デラウウェア州を通る車に対し4ドル以上の通行代金支払いを命じた。こんな決まりを勝手に作っていいものなのか。

18番目のペンシルバニア州に入った。ウイリアム・ペンのペンと、ラテン語の森を意味するシルバニアを合体した名前。ニックネームは「キーストーン ステート」。合衆国発祥の地なのでキーストーン。

フィラデルフィアアメリカの旅1の地図参照)は、トーマス・ジェファーソンが起草した独立宣言を採択し、合衆国が誕生したところ。ワシントンDCが建設されるまで臨時の首都だった。人口は145万人で全米6位。サンフランシスコやウエストハリウッドに次いで、同性愛者が多く住んでいる。

こういう統計はガイドブックには載っていないので奥村さんの生情報が面白い。ここにはアメリカの4大スポーツ(野球・バスケット・アイスホッケー・アメリカンフットボール)すべてのスタジアムがある。スポーツを楽しめる余裕のある人たちが多いのかもしれない。

バスを降りてエルフレス小径と呼ばれるアメリカ最古の住宅街を通り、インディペンデンス国立歴史公園に向かった。エルフレス小径には30軒ほど、1700年頃のレンガ作りの家が連なる。


独立記念館
 

独立記念館前の
ワシントンの銅像
 
 
記念館にはこうしたコスチュームの
おじさんが数人いる


独立記念館は、1776年7月4日に独立宣言を採択したところ、1787年に憲法制定会議をしたところ。正面には、ワシントンの銅像が建っていた。館内には当時のコスチュームを着たボランティアと思われるおじちゃんが数人。絵になる人たちだ。

独立記念館と道路をはさみ向かい側に、リバティベルセンターがある。独立宣言を朗読する前に打ち鳴らされた鐘が、自由の鐘(左)。今はひびが入っていて、鐘をつくことはできないが、大勢の観光客が記念写真を撮っていた。歴史が浅いアメリカは、240年前のものでも象徴なのだ。

フィラデルフィアを舞台にした映画「ロッキー」を全部映す時間がないので、触りを見せてくれた。無名のボクサー・ロッキーがチャンピオンに善戦するストーリ。軽快な音楽が忘れられない。映画に出てくる場所で下してくれた。

旅行会社が決めている見学場所には入ってない。こういう箇所があるたびに奥村さんは釘をさす。「怪我などしないでくださいね。余計な所に寄ったせいだと僕が叱られるんです」。旅行者に良かれと思ってしたことが原因でお咎めを受けるとは。会社ってなんて窮屈なんだろう。

階段を駆け上がったところにフィラデルフィア美術館があるが、おまけの下車だから市内の展望を楽しんだだけで終わった。市庁舎の上にある銅像はウイリアム・ペンだというが、遠目には分からない。1987年までは、市庁舎より高いビルが禁止されていた。

19番目のニュージャージー州を通った。ニュージャージーはガーデンステート。州の名前はイギリスのジャージー島に由来する。トンネルに入り1分もするとハドソン川。ハドソン川のトンネルの真ん中に州境がある。ついに20番目のニューヨーク州に着いた。旅の初日から「旅の最終が20番目のニューヨーク州」とさんざん聞かされていたので、「ついに」という思いがこみあげる。

ニューヨーク州のニックネームは「エンパイヤ ステート」。ニューヨーク市のニックネームは「ビッグアップル」。りんごがシンボルなのはデザインとしてもステキだ。でもジューヨークと呼ばれることもある。ユダヤ系アメリカ人がマンハッタンを支配しているからだ。旅行者にはユダヤ人が力を持っていることなど皆目わからない。

でも、イスラエルの旗を持ち、あごひげをはやした正統派ユダヤ人のような人たちがたくさん歩いているのを車窓から見た。そうかと思うと、ユダヤ人反対!をかかげた街宣車も走っていた。交差点で抱き合っている男2人もいた。車窓から見ただけでもニューヨークは面白い。

今日の夕食は自由食。待ち合わせ時間に拘束されずに、気楽に歩き回れる。ニューヨークは2度目なので土地勘もあるし、碁盤の目だから分かりやすい。しかもホテルはタイムズスクエアやブロードウェイに5分ぐらいの便利な場所にある。前に来たときはブロードウェイでふたつのミュージカルを見て、ブルーノートでジャズも聴いた。どうしても見たいミュージカルもないので、街歩きを優先した。

以前来たときは「ニューヨークは危険だ」と脅されたものだが、ジュリアード市長が改善後は安全な街になったと言われる。少なくとも今回は怖い感じはしなかった。車窓からでさえ面白いのだから、自分の足で歩けばもっと楽しい。高級レストランやカフェがある同じ町に、屋台もたくさんある。偽物を売っている露店もある。角ごとに巨大なアートも置いてある。高層ビルのガラスにいくつかの高層ビルが重なって映り、私にはそれすらもアートに思えた。夕日が射したビル、日没後のビル。どれも美しい。

聖パトリック教会
 
ニューヨークの繁華街にある
ユニクロ
 
アイルランドの守護聖人
聖パトリックをまつった教会
 
ライトアップされたロックフェラーセンター
プロメテウス像も輝いている



ただ歩くのも能がないので、いくつかの目標を決めた。まずMOMA(近代美術館)に行ってみた。無料になる日があると聞いていたがすでに閉館。いずれにしろ無料は金曜の夕方からだと分かった。垢抜けした外観だけで我慢。5番街の高級店に混じり、ユニクロもあった。わが家の近くにあるユニクロとは格が違う。2階にあがる階段の華やかさはまるで一流デパートのようだ。パリのオペラ座の近くのユニクロよりも規模が大きいように思った。

次の目的地はセントパトリック教会。去年アイルランドに行ったときに聖パトリックの名前を何度も耳にした。アイルランドの守護聖人の名がついていることからも分かるが、カトリック系のアイルランド人が1888年に建てた。無一文で移民してきた彼らが、わずかの時間でこれだけ立派な寺院を建てた。

清教徒というプロテスタントの移住者が中心のマンハッタンのど真ん中に、アイルランド系のカトリック教会がでんと構えている。考えてみると驚きだ。今は工事中で無様な外観だった。でもカトリック教会の常として内部は開放していて、7000本以上のパイプを持つパイプオルガンへ健在だった。

次はロックフェラーセンターへ行った。ロックフェラーセンターは19の高層ビルを総称している。70階建てのGEビルの中に入ってみると、NBCのスタジオやアメリカ史を描いた壁画があった。GEビルの前にあるプラザは、クリスマスシーズンに世界中に放映されるので、テレビでは何度も見ている。冬は金色のプロメテウス像とクリスマスツリーが華やかだ。スケートリンクにもなる。前に来たのは8月、今回は5月末。平凡な時期だからカフェがあるだけだ。

8時過ぎにホテルに戻ると、ツアー仲間が10人ぐらいロビーにいた。添乗員がGEビルの夜景見学に連れていってくれるとか。希望者が集まっていたのだ。「行きましょうよ」と誘われ「ニューヨークの夜景は有名だもんな」と付いていくことにした。チケット売り場は大混雑で、待ち時間が1時間以上ある。こんなに待って、しかも29ドルも払って夜景を見ることもないので止めた。

1人参加の元お嬢様がたが、一緒に行きたいと言うので、夜の街をぶらつくことにした。昼間見たプラザのプロメテウス像はライトアップされて、また違った顔を見せてくれた。五番街など歩き、タイムズスクエアそのものに行ってみた。ホテルの前の道路からもタイムズスクエアの広告はよく見えるが、スクエアに行ってみないことには話にならない。
奥村さんが「世界一の繁華街です。世界の十字路ですから。笑っちゃうほど人がいますよ」と言う。たしかに混雑はしている。でも「土曜日の渋谷の街ならもっと混んでいるのでないか」と、みんなの意見が一致した。奥村さんは三島出身で高校卒業後からアメリカ住まい。日本の混雑ぶりを知らないのではないか。どちらが人が多いかどうかはともかく、センスある広告の数はタイムズスクエアが勝る。

たくさんある広告の中でいちばん目立つ位置にあるのが東芝の広告(左)。去年まではその位置にソニーの広告があったらしいが、今は一番下の目立たないところにある。ソニーの衰退はこんなところにも表れている。

旅行記は旅の直後に書いているが、HPアップは押せ押せで1年後になっている。そうこうしているうちに東芝の不祥事が話題になっている。2015年10月の今、東芝の広告はまだタイムズスクエアにあるのだろうか。
          
          <ニューヨークのマンハッタン アット タイムズスクエア泊>  

                              (2015年10月16日 記)


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