ブータンの旅5
ブータン仏教

五体投地ブータンを語るときに、ブータン仏教を外すわけにはいかない。それほど生活に入り込んでいる。どんな家にも広い仏間があると聞いた。「高層マンションの部屋にも必ず作ります」とガイドは言っていた。

 チベッ仏教の流れをくむ密教だが、チベットと同じではない。たとえば五体投地と呼ばれる身体を地面に投げ出す祈りも、チベットとブータンでは違う。ブータンの場合は、頭上にかざした手を顔の前に、次は胸の前において祈る。そして身体を折り曲げて地面にひれ伏す(左)。ブータンにもチベット人がいるので、1度だけ身体を曲げない五体投地を見た。バタッと倒れて豪快だった。

長い布を竹竿につけたダルシンや、ルンタと呼ばれる布が橋や民家の軒先などあちこちに飾ってある。お経を印刷してある布は、白・赤・黄色・青・緑の5色。ダルシンとルンタが風になびいている光景を初めてみたが、宗教的意味合いは別にしても、きれいだった。

ダルシン ルンタ
 
ダルシン(竹竿に長い布)は
あちこちに旗めいている

 
ルンタ(ロープに巻いている布)も
鮮やかだ

赤い袈裟を着たお坊さんが、街中にたくさんいる。国の僧院に属する僧侶は5000名。民間の寺に属している僧侶が3000名。他に在家(妻帯してもいい)の僧侶もたくさんいる。人口がわずか70万人の国に、こんなにお坊さんがいる。

僧侶 青年僧侶 お坊さんの学校
 
赤い袈裟を着た
僧侶は街中で見かける
 
瞑想中の
青年僧侶

 
お坊さんの学校
このときは英語の授業だった

 6歳から入るお坊さんの学校もある。授業をのぞかせてもらったが、ふざけている子、見るからに真面目そうな子、両方とも可愛らしい。正式な僧侶になれば結婚はできない。親が小さな子供の職業を決めてしまっていいのかと心配になったが、8年間の修業後、僧侶にならない選択もできると聞いて安心した。

 

ゾンとラカンとチョルテンとゴンパ

ツアー旅の場合は、どこの国に行ってもなぜか寺院見学が多い。ブータンの場合もほぼ毎日、寺を回った。

ブータンの寺めぐりでよく出てくる言葉は、ゾン(政治と宗教の中核になる建物)、ラカン(寺)、チョルテン(仏塔)、ゴンパ(迷走する場所)。この意味を覚えておけば、ガイドの説明も分かりやすくなる。

なかでもゾンは政治や宗教の中心で、広大な一角に、公務員もいれば僧侶もいる。首都のティンプーにあるタシチョゾンは、各県にあるゾンの中心で、日本で言えば国会議事堂と霞が関の官庁街と皇居と大寺院が一堂に会しているようなところだ。

 昼間は仕事をしているので、見学は午後4時半からしか出来ない。11月の夕暮れは早い。すぐ暗くなってしまい、見学が終わった後にはライトアップされた。

タシチョ・ゾン プナカ・ゾン
 
ライトアップしたタシチョ・ゾン
政治や宗教の中心である
 
プナカ・ゾンは国王の戴冠式や結婚式など
大事な行事を行う

カムニとラチュティンプー以外に、パロ、ジャカール、トンサ、ウオンディ・フォダン、プナカの6か所でゾンを見学した。

 外観も内部の仏像も似たようなものだから「又かあ」の気持ちにもなるが、写真を見ると違いがある。なかでもプナカゾンは、国王の戴冠式や結婚式が行われたところ。東日本大震災の時も、国王はこのゾンで祈ってくれた。

どこのゾンでも内部は撮影禁止なので、内部の写真は1枚もない。日本とは違う仏像だったので記録に残したかったが、残念だ。カメラ禁止の場所は靴も帽子も脱がねばならない。「靴を脱いだらカメラ禁止」の規則は、2日後には覚えてしまった。

旅行者は肌があらわでさえなければ、何を着てもいいが、ブータン人が寺院に入る場合には、男性はカムニという白い布を巻かねばならない。一般人は白い布だが、国王は黄色、大臣は山吹色、裁判官は緑色、ダショー(貴族)はえんじ色と決まっている。外観だけで身分が分かってしまう。

 女性はラチュという手織りの布を、肩にかける決まりだ。

 私たちをガイドしてくれた男性のアシスさんと、アシスさんの同僚女性ガイドの写真(左)で、カムニとラチュの違いが分かると思う。

  (2013年2月16日 記)


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