北欧の旅 6
ノールカップでの白夜

2006年7月4日(火)-7日目

 粗末な夕食後、心が弾まないままノールカップへ向かった。雨こそ落ちてないが、空は黒い雲に覆われている。途中、サーメ人のテントに立ち寄ったが、生活の匂いがしないので面白くなかった。

 約1時間後、夜の10時半ころにヨーロッパ最北端の岬ノールカップに到着した。北緯71度10分21秒。この数字は、土産品やポストカードにも印刷され、自然に覚えてしまう。ホニングスヴォーグを散策した時には、こんなにも観光客が多いとは気づかなかったが、ノールカップの駐車場には何台もの大型バスや乗用車が並んでいて、これまでの寂しさは一変した。でもここまで来る日本のツアーは少ないらしく、日本人には会わなかった。

ノールカップ到達証明書

バスから降りると寒い!風が強くて耳がちぎれそうだった。毛糸のマフラーを被り、厚手のジャケットを着ても震えがきた。

 高さ300メートルもの崖になっている岬の先端には、ノールカップホールという立派な施設が建ち、この中にいる限り、最果ての淋しさも厳しさもない。大勢の人でごった返している。ノールカップ発見の歴史、サーメ人の歴史が展示してある部屋、チャペルもある。ビデオルームでは、ノールカップの四季を上映していた。迫力ある映像。

 郵便局も大混雑で、ポストは3台も並んでいた。記念スタンプを押してくれるので、ここから友人に絵はがきを出した。自分には出していないので、どんなものか見ていない。ノールカップ到達証明書(左)も郵便局で発行している。自分でお金を払うならいらないが、ツアー会社が用意してくれたので、受け取った。

郵便局脇の大型画面で、サッカーワールドカップの準決勝、イタリアとドイツの試合を中継していた。ドイツ人のため息、イタリア人の歓声。画面を見ていない私にも、どちらが勝ったかわかる。

朝からの雨と曇り空を思えば、太陽が出るなど奇跡に等しい。しかし、11時半頃に奇跡は起こったのだ。雲はどんどん動いている。雲の隙間から青空さえ見えた。ガイドブックにあるような、真っ赤な空は望むべくもなかったが、雲間からサーと光が射した。岬の先端にある丸いモニュメントがアクセントになり、それなりに良い画面になった。

ノールカップ岬23時18分 ノールカップ岬23時23分
7月4日 23時18分 7月4日 23時23分
ノールカップ岬23時37分
7月4日 23時37分 7月5日 0時35分

ノールカップ3回目の添乗員のKさんは、前2回とも見えなかったという。前2回は、昼間は晴れていたのに、その時刻は雲に覆われたと言う。Kさんは「こんな日に見えるはずがない」と思っていたらしく、飛び上がって喜んでいた。私たちより喜んでいた。

せっかく太陽の片鱗が見えたというのに、11時40分には、バーに集合することになっている。カーテンで室内を暗くしたバーのテーブルには、ろうそくの灯りとキャビアとワインが用意されていた。12時を回った途端に、カーテンがスルスル上がった。先ほどまで出ていた太陽はもう隠れていたので、せっかくの演出もなんにもならず、誰もが落胆の声を発した。ところが10分もすると、また太陽が顔を出したのだ。キャビアどころではない、外に出て写真を撮りまくった。

ツアー仲間と話したのだが、他の人がこの写真を見てもなんとも思わないかもしれない。撮影の時刻がわからないのだから。しかも、私はデジカメの時刻をノルウェー時刻に修正していない。沈まぬ太陽という表現は、本来なら地平線に沈む太陽が、また上昇するからだが、こんな天体ショーは望むべくもなかった。

バスに戻ると、ドライバーが”You are very very lucky”と何度も話した。彼によれば、太陽が今日のようにわずかでも見えるのは10%にすぎないという。数年前に行った友人は、丸いモニュメントすら見えなかったという。思えば、このノールカップにたどり着くだけで、ずいぶん日数を費やしている。途中にはたいした見どころがなかっただけに、太陽が見えなければ、ナンのためにここまで来たかわからない。やっぱりラッキーだったのかもしれない。 
<ホニングスヴォーグのアークティックホテル泊>

7月5日(水)―8日目

再び海底トンネルを通って、本土へ戻った。ポルサンゲルフィヨルドが左手に見えた。ノルウェーでは毎日フィヨルドを見ていたが、これが最後。

サーメ公園

12時半ころ、サーメ人が多く住み「サーメ人の首都」とも呼ばれるカラショクに到着。もうすぐフィンランドに入国する。ノルウェーとフィンランドでは通貨が違うので、ここで両替をした。

昼食は、サーメ公園(左上)にあるテントのようなレストランで、ベリーソースつきのトナカイ肉(左下)を食べた。トナカイの肉は、北極圏の人々には一般的な食べ物らしい。スーパーマーケットでも、たくさん売っていた。トナカイというと、サンタクロースを思い出してしまう。クリスマスのご馳走の連想から、美味しい肉と勘違いするが、硬くて臭い。


トナカイ肉 2時半頃、国境を越えた。ノルウェーの隣国はスウェーデンだが、北のほうで接している国はフィンランドである。テノー川を渡るとフィンランド。パスポート検査もなかったが、ややこしいことに時差が1時間あるので、時計を直した。ツアーの場合は、決められた時間に遅れようものなら大変だ。時間あわせは大事なことなのだ。(2007年6月10日 記)


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