北スペインの旅5 
 巡礼の道

2010年8月26日(木)-7日目

 アストルガの街を見学後、フォンセバドンという廃村に着いた。私たちはここから2`だけ巡礼の道を歩くことになっている。朽ちた家が点々としていたが、廃屋を利用した巡礼宿があった。スタンプを押すために1つの宿に寄ってみたが、話に聞いていた巡礼宿よりずっと快適だ。巡礼宿の素泊まりだと4ユーロぐらいだというが、ここのように清潔だともっと高いのかもしれない。

 宿で休憩している何人かと話してみたが、イタリアからフランスからスイスから来たなどさまざまだ。ひとりで歩いているという若い女性に「ひとりで怖くない?」と聞いてみた。「怖くない。前後に誰か歩いているし、途中で友達もできるの」とほがらかに答えてくれた。歩き始めてから25日目だと言っていた。

フォンセバドンの巡礼宿 巡礼者 巡礼路の牛

フォンセバドンのALBERGUE
(巡礼宿) 
 
1人で歩いている男性巡礼者
 
巡礼路は実にのんびりしている。
すぐそばを牛が食んでいる


 今の巡礼の道は、中世の頃のように、信者や教会関係者が命がけで歩くことはない。道や宿が整備されているので、危険ではないし、万一身体の調子が悪くなったら、引き返してもいい。仕事を持っていて1ヶ月も休みが取れない場合は、数回に分けて歩いている人もいる。目的もさまざまだと聞いている。巡礼目的の人もいるだろうが、単にアウトドアスポーツとして歩いている人も多い。歩くことで人生を振り返る人もいれば、自己発見のために歩く人もいる。自己との対話をしている人もいる。

 日本でも四国88ヵ所を歩いている人がいるが、両方歩いた人の手記を読むと、スペインの巡礼の道を歩いている人数は10倍以上だ。四国88ヵ所めぐりは年寄りが多いが、この道は若者が圧倒的に多かった。もちろん夏休みということもある。

 フォンセバドンから2`先の、標高1505bの鉄の十字架までは上りが多かったが快適だった。放牧の牛がのんびり草を食み、ヒースの群生がまだ赤紫の花を残していた。木陰がある道ではないが、いつもに比べれば雲が多いから歩きやすい。最適な時期は野の草が咲き乱れる5〜6月か、黄葉が染める10月だという。そのどちらでもない暑い時期に私たちは来ている。

 歩くのが好きな私には、物足りないウオーキングだったが、E社の他のツアーにあるように巡礼路100`歩く時間もない。このツアー場合、平行してバスが走っていて荷物は運んでくれるのだという。普通の巡礼者は最低10`のリュックを背負っている。そういう彼らにまじって軽装で歩くのも恥ずかしい気がする。

 ポンフェラーダという町の郊外で昼食後、セブレイロ峠に行った。標高1300bで巡礼の道最後の難所だという。カスティーリャ・イ・レオンとガリシアの境。

ケルト文化の名残 自転車の巡礼者 ホタテ貝とひょうたん

石を積み上げた壁と藁屋根は
ケルト文化の名残 
 
自転車を使う巡礼者もいる

ホタテ貝と瓢箪を売っている
土産物屋 


 ローマ人が入ってくる前はケルト人が住んでいた。石を積み上げた壁に、藁とエニシダで作った屋根はケルト文化の名残だという。こんな家が十数軒残る村の中を散策した。村の土産屋には、杖やホタテ貝がたくさん売っている。ホタテがいつにも増して目立つ峠だった。もちろん、サンタ・マリア・ラ・レアル教会もある。スタンプを集めている人は、ここで又スタンプが増えた。

コゾの丘のモニュメント いよいよ、6時40分ころゴゾ(歓喜)の丘に着いた。800`もの道を歩き続けた人にとって目的地の聖堂が見える丘にたどり着いた感激は想像に余りある。左は丘に建つモニュメント。

 まだ太陽が照っている時刻だが、よりによってバスを降りたとたん、突然大雨が降ってきた。サンチャゴ・デ・コンポステーラの大聖堂が見える丘に来たというのに、視界もなにもあったものではない。傘をさしていても役に立たないような風混じりの雨だ。

北部スペインは雨が多いと聞いていたが、雨に降られたのはこの時だけだった。こんな天気のときも巡礼者は歩いているのだなと、あらためて気づいた。

 最終目的地のサンチャゴ・デ・コンポステーラに着いたのは、7時を過ぎていた。追加料金を出してパラドールに泊まる人と、旅行会社が決めたホテルに泊まる人とふたつに分かれる。15人のうち7人がパラドール組だ。パラドールに泊まるには2泊分でひとり3万円(シングル利用の人は45000円)の追加をせねばならない。追加料金ふたりで6万円はあまりにもったいないので、グレードアップはしなかった。

 泊まったことのある友人や泊まった人の話を総合すると、高い割には設備がよくないらしい。日本でクラシックホテルに3ヵ所ほど泊まったことがあるが、格式は感じられるものの、水回りなどは快適ではなかった。同じようなものかもしれない。でも、91のパラドールの中で最高と言われるホテルに泊まりたい人の気持ちもよく分かる。

 最初のチェックインがパラドールだったので、私たちは待っていなければならない。ゴゾの丘で降り出した雨はまだ止んでいない。大聖堂の写真を撮ろうにも雨では台無しだ。逆光の大聖堂を撮りたいと旅の前から狙っていたが、どうにもならない。もっともここガリシア地方は、雨が少ないスペインではめずらしく雨が多い地域だという。

サンチャゴのパラドールパラドールの中を少し探検してみた。王立病院の跡だというが、王立だけあり重々しい。レオンのパラドールによく似ている。もちろんホタテがついた巡礼姿のヤコブ像もロビーに飾ってあった。

 私たちのホテルは大聖堂にも近く、しかも商店街があるので立地条件はよかった。ここも5つ星だけあり、内部も快適だった。

 夕食は町のレストランまで歩いて行った。今までの夕食は泊まったホテルのレストランでとったが、今回はホテルが別れたので、いたしかたない。

 ホタテ貝の夕食 なんと夕食の前菜にホタテ貝のガリシア風(左)が出た。冗談で「最後にホタテ貝が食べられると最高ね」と仲間と話していたが、やっぱりというか、ここでホタテ料理を出さねば観光地の名が廃る。

 オリーブやにんにくで味付けがしてあった。私はどちらかというと醤油味が好きだが、ここはスペインだ。    
  <サンチャゴ・デ・コンポステーラのメリア・アラグア泊>

                            (2012年7月2日 記)

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