ベネルックス3国の旅 10
皆既日食・ゲント

 ブリュッセルとブルージュの中間にあるゲントは、かつてブルージュと繁栄を競いあった歴史ある街。現在の人口は25万人で、それなりの都会ですが、主な見所は徒歩で回ることが出来ます。運河沿いに並ぶギルドハウス、マルクト広場、フランドル伯の城、聖ハーブ教会・・と中世の街おなじみが勢揃い。右は、フランドル地方の軍事拠点だったフランドル伯の城壁。

 
ゲントが思わぬ印象深い地になったのは、皆既日食のためです。8月11日にヨーロッパで皆既日食が見られると聞いても、冷めていた私。「地球と月と太陽が一直線になるだけじゃない」「わずかな天文ショーのために外国まで行く人の気がしれないわ。雨が降ったら台無しだし」と。

 
ところが、ベルギーのゲントで、日食フィーバーに巻き込まれることになりました。当日は朝から時折雨がパラつく曇り空でしたが、天文ショーが始まる昼過ぎには、雲間から太陽が顔を見せ始めたのです。教会、市庁舎、鐘楼がある願ってもない場での出来事でした。小学校の時に煤でガラスを黒くしたことを思い出し、何かないか。フト思いついたのが、未使用フィルムの黒い端。これを通して空を見上げ「ワー見えた!見えた!」

 フィルムを通すと、黒い空に真っ赤な三日月が輝いているような画像になりました。写真をご覧下さい。見慣れている下弦の月だと勘違いしてしまいそうですが、もちろん太陽。深紅の太陽が欠けていくさまは、思ったより神秘的でした。クライマックスでの突然の暗闇を期待していましたが、薄暗くなった程度。後で聞いたら、ゲントで見る日食は、最大でも97%。3%の太陽光線の威力を知ることにもなりました。

 広場に集まった人たちは、気軽にサングラスを貸してくれたり、フィルムを指して「目に悪いよ」と言ってくれる人も。東西の男女が一緒になり、空の一点を見上げたのでした。

 1999年8月11日の皆既日食は、イギリス、フランス、ドイツ、オーストリア、ハンガリー、ルーマニア、イラク、イラン、パキスタン、インド・・と、有名な観光地を含む広範囲で見られました。日本では範囲外のためか、たいして話題になりませんでしたが、ヨーロッパでは大フィーバー。夜のテレビもトップは日食。欠け始めから回復するまでの連続写真、黒い太陽を囲む白いコロナ、各地の人間模様を放映していました。新聞も同じ。数ページにわたる報道でした。写真は、買い求めた新聞のコピー。

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