ベネルックス3国の旅 12
日本人とカメラ

 ランドル織物の中心地として繁栄を見せたブルージュは、中世の面影が色濃く残る街。「橋」の意味、ブルージュを市の名前にするだけあり、運河には50以上の橋がかかっています。

 この街のノートルダム寺院を訪れた時のこと。「この聖母子像は、ミケランジェロが海外に残した唯一の作品です」の説明を受けた私たちは、一斉にパチリ。ツアー全員のシャッター音が増幅されて聖堂内に響きました。

 トルコで「黒いマリア像」を見学した時にも、同じようなことがありました。洞窟内にある黒いマリア様は何よりの被写体で、やはり一斉にパシャパシャ。写真を撮り終わると、即歩き出しました。若いガイドが「日本人は写真を撮るだけですね。祈りもしないし、じっくり眺めることもしない・・」と私に話しかけました。

  たまたまカトリック信者がいなかったからか、トルコでもブルージュでも祈る人は皆無。仏像を見れば、仏教信者でなくても自然に手を合わせるのが、ほとんどの日本人です。マリア様に手を合わせなかったのは、日本人としてごく普通の行動ともいえますが、一斉にパチリは、今思うと恥ずかしい限り。

 日本人とカメラの問題で、考えさせられる場面がもう一つありました。オランダのデ・ハール城でのこともともとは、1162年に建てられた中世の城でしたが、20世紀初頭にロスチャイルド家が再建し、開放しています。広い庭園、水をたたえた堀、煉瓦造りの城・・と、まさに「おとぎの城」。

 このロケーションは、オランダ人にとっても憧れなのか、デ・ハール城を背景に結婚写真を撮っているカップルが2組もありました。1組は男女とも40代ぐらい。もう1組は、それぞれが子連れの中年カップル。組み合わせもイマ風だし、旅の途中で結婚式に巡り会えたチャンスを逃すまいと、ほとんどの人が記念撮影中の2人、ないし4人にカメラを向けました。

 カメラを向けている日本人十数人の姿に、プロのカメラマンは非常に興味を示し、その様子を面白そうに何枚も写しました。このカップルは、写真を見ながら話しているかもしれません。「日本人って、おかしいよね。みんなで、私たちを撮ってどうするのかしら」と。私も負けずに、撮影中のツアー仲間を撮りましたが、あわてたのでボケていますね。

 たまたま帰国したら、外国の自動車会社が作ったCMが、日本人を侮辱したものだとして、話題になっていました。「日本人とみられる団体客が海外の観光地で写真を撮影中に、高級外車が通りかかると、一斉にその車にカメラを向ける」というもの。同じような経験をした直後だけに「侮辱どころか、まったくその通りだわ。こんな日本人像が、世界の共通認識なのだ」と、おおいに反省し、ちょっぴり落ち込みました。
 
 この海外旅行の直後に、私はコンパクトカメラのサークルに入りました。先生のアドバイスは「絵葉書のような景色ではなく、人物を入れたスナップを」。世界の笑い者にならない行動で、被写体に迷惑をかけず、しかも心に残る写真を撮るにはどうしたらいいのか、常に悩んでいます。
(2002年10月2日記)

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