ベネルックス3国の旅 7
フランダースの犬

  ベルギー第2の都市アントワープは、豊かな経済力を背景にしたフランドル絵画とバロック建築の中心地でした。「フランダースの犬」の、孤児ネロと老犬パトラッシュが、近郊の村から牛乳を運んだ町がアントワープ。右の写真は、物語に出てくるノートルダム大聖堂。

 日本では大正末期に最初の訳本が出て以来、数え切れないほど出版されているとか。20数年前には、アニメが1年間も放映されました。ベルギーの地名は知らなくても、フランダースの地名は、ほとんどの日本人が知っています。フランダース、フランドルと聞くと、風車のある牧歌的な田園風景が浮かぶのは、アニメのおかげかもしれません。なのに、地元では、この物語が全く知られていないと聞きました。

 訳本を読み直してみましたが、謎が解けたような気がします。イギリス人の女流作家ヴィーダが1871年に訪れた際の作品ですが、こんな記述が。「・・ルーベンスがいなかったら、アントワープはどうだったでしょう。ただきたない陰気な騒々しい市場にすぎず、波止場で取引する商人をのぞいては、だれひとり目にとめて見ようともしないでしょう。・・」

 陰気で騒々しいだけの町と言われて、嬉しいはずはありません。「ルーベンスがいなかったら」と書いてあるように、作者はルーベンスがお気に入りのようです。本のタイトルは犬が主人公ですが、内容はルーベンスの宗教画讃美。物語のラストを覚えていらっしゃいますか。

 「とうとう見たんだ」ネロは大声で叫びました。「おお神様充分でございます」。クリスマスの朝、大聖堂の前でネロとパトラッシュが凍死しているのが見つかりました。

 物語とはいえ、憧れ続けてやっと目にしたネロ少年には申し訳ないと思いつつ、「又教会か」のノリで入場。ベルギー最大のゴシック大聖堂には、ルーベンスの絵画が5点かかっています。入り口にも彼の銅像が立ち、まるでルーベンス寺院。なかでも「十字架を立てる」と、写真の「キリストの降架」は圧巻。内部の撮影は可能でした。

 「ネロの舞台はどこ?」と日本人にたびたび聞かれた観光課のヤン・コールデンさんが、一念発起して舞台探し。アントワープから5q離れた村ホーボーケンを突き止めました。ついに1985年には、ネロとパトラッシュの銅像除幕式にまでこぎ着けたのです。地元で人気がないからでしょう。銅像が立っているのは、大聖堂のそばではなく、ホーボーケン。訪れる人はまれだそうです。

新ニュース!
 2003年5月の新聞に「ネロ少年の碑、最期の地に」の記事。それによると、市の郊外にあったネロ少年とパトラッシュの銅像が、アントワープ中心部のノートルダム大聖堂の前広場に設置され、9日にお披露目に式典が行われた・・とあります。日本人観光客向けでしょうね。台座には日本語で「永遠に語り継がれる私たちの宝物」と記されているとか。

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