エジプトの旅 10
砂漠とラクダ

 エジプトは、国土の97%が砂漠です。童謡「月の砂漠」のイメージから、砂漠はロマンチックな空間なのだと、長いこと思いこんでいました。粉砂糖のようにサラサラした細かい砂、風紋がきれいに出来る砂が、無限に広がっているとばかり、勝手に思い描いていたのです。

 ところが、エジプトの砂漠のほとんどは、岩山が連なり、砂の中に小さな石も混じる岩砂漠、礫砂漠と言われるもの。ロマンチックというより、むしろ荒々しい雰囲気でした。

 右の写真は、めずらしくサラサラ砂漠で、「記念にお持ち帰りください」のガイドの薦めに従い、袋に詰めているところ。オベリスクの項でふれたアスワンの「石切場」に向かう途中にあります。わざわざ下車したところをみると、こんなサラサラ砂漠はめずらしいのかもしれません。

 砂漠と言えばラクダを思い浮かべますが、ラクダが群をなしていたのは、ピラミッドの付近だけ。私たちが、観光で回った他のどの地にもラクダはいませんでした。

 以前は、砂漠の通商に欠かせなかった動物ですが、今でも飼育され、ラクダ市も開かれているそうです。観光以外の使用目的は聞きそびれました。

 私たちが接したラクダは観光用。働き盛りを過ぎたのか、精気もなく薄汚いのです。映画「アラビアのロレンス」のかっこいい勇姿が目に焼き付いていることもあり、ノロノロ動き回っているラクダは無様にさえ思えました。

 ラクダ乗りの費用が含まれているので、「乗らなきゃ損」とばかりトライしました。
 地面にぺたっと座っているラクダに腰を下ろすやいなや、スクッと起立。振り落とされるのではないかと、一瞬ヒヤ!ノロノロ動いていた緩慢さからは想像もつかないような迅速な動きでした。ヒトコブラクダなので、背中も不安定。乗り心地はよくありませんでしたよ。

 「月の砂漠をはるばるとー」と無邪気に歌っていた頃には、実際に砂漠でラクダに乗ろうとは、想像もしないことでした。写真は、ラクダ初乗りの夫。遠くにピラミッドが見えるのがおわかりですか。

 ところで、神殿や墓の内部では、ラクダのレリーフ・絵・彫刻をまったく見ませんでした。動物のミイラが蒐集されている博物館のコーナーにも骨すらありません。見逃したのかもしれないと、帰国後に写真集を丹念に見ましたが、やはりラクダは不在。ライオン・鷹・鴨・牛・カバ・カモシカ・ワニ・猿ばかり。

 ラクダは砂漠でした活躍できない動物で、人類との関わりは4000年以上。なのに、なぜ古代エジプトの壁画にラクダが登場しないのでしょう。「ラクダがエジプトに入って来たのは、ペルシャに征服されたBC525年以降」と記されたヘロドトスの著作を見つけました。エジプトと言えば砂漠、砂漠と言えばラクダを思い浮かべる方も多いと思いますが、古代エジプトとは無縁の動物だったのです。

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