エジプトの旅 3
ピラミッド内部には壁画がない

 
今は遺跡保護のために、ピラミッド内を見学できる人数は制限されていますが、当時は無制限。この歳になると、ワクワク感情はめったに起こらないものですが、この時ばかりは、「長年の思いがやっとかなう」と、興奮気味で入り口に進みました。もっとも、ご覧のように、売り込みに懸命な大勢の人がたむろしていたので、振り切るのが精一杯。探検気分も、そがれてしまいました。 

 
内部のイラストは「吉村作治のエジプト講義録」から拝借しました。9世紀の支配者・アル・マムーンが盗掘のために開けた穴が、今では見学者の入り口。本当の入り口は、巧妙に隠されていたために、わからなかったそうです。

 万一大きな石が崩れ落ちてきたらイチコロだな・・の思いがよぎりましたが、後ろから押されるように前進。鍾乳洞に入ったようなもので、明るい世界から急に暗闇に入るので、目も慣れず、ほのかな電灯だけが頼りです。
 しばらく水平に歩いた後は、手すりが必要なほど急坂の上昇路があり、しかも天井が低いときてるので、腰をかがめねばなりませんでした。右写真は、暗闇を登っているところ。


 登りり切った所にある「控えの間」と「王の間」は、ピラミッド全体の5合目にあたり、地上から約73bにあります。「王の間」は後世の人がつけた名前ですが、驚くほど簡素で殺風景。奥行き10.5b、幅5.2b、高さ5.8bと、かなり広いのですが、蓋のない石棺がぽつんと置いてあるだけ。左の写真のように、石棺には彫刻もなく、端も欠けています。写真を自由に撮ってもよいし、石棺に腰をおろしている人さえいます。

 一般的には、ピラミッドは王の墓だと言われていますが、本当にクフ王の墓であり、石棺だとしたら、綿密に計算し尽くされた巨大な外部とあまりに不釣り合い。吉村先生は「ピラミッドは墓ではない。他にクフ王の墓があるはず」とおっしゃっています。壁や天井は、黒っぽい花崗岩で、覆われているので、重要な部屋であったことは間違いなさそうです。

 ピラミッド内部には、壁画がありません。長いこと、ピラミッドと壁画はワンセットだと思いこんでいたので、「壁画はどうしたの?盗まれたの?博物館に運んだの?」と、思わずガイドに矢継ぎ早に質問を浴びせました。「壁画など最初からなかったのです」が若いガイドの答え。現地ガイドのいい加減さは他の国でも経験済みなので、そのまま信ずることが出来ませんでした。

 帰国後読んだ吉村先生の本には、「あらゆる時代を通してピラミッドの壁に絵が描かれることはなかった」とあり、ガイド嬢の答えは正しかったのです。もしもピラミッドの内部に入ることがなかったならば、「ピラミッドと壁画」は、私の脳にインプットされ続けたに違いないのです。恐ろしいことに。では壁画はどこに?これは、次の「ツタンカーメン」の項でお話します

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