イランの旅 7
ペルシャの市場

 イランのバザールは、いわゆる「ペルシャの市場」。この名の曲を口ずさみながら、写真を見てくださいね。ざわめきと活気と匂いが伝わるでしょうか。迷路のような細い道が何本も交わり、無事に脱出できるのか心細くなりましたが、広場を目指せば迷子にならないと言われ一安心。明るく開けた広場は、シルクロード時代の隊商宿の中庭で、噴水や木陰がありホッとする所。このように、建物にも歴史がしみこんでいるバザールは、まるでアラビアンナイトの世界です。

 売っているものは、生もの以外すべて。貴金属、絨毯、香辛料、金属細工、壺、装飾品、アラベスク模様のタイル、衣類、ピスタチオなどのナッツ類、お菓子・・。いざ買うとなると、値段の交渉が下手な私たちは、ペルシャ商人のカモにならざるをえません。エジプトに駐在していた人は「言い値の3分の1までは下がるよ」と言っていますが、限られた時間内での買い物は、せいぜい半額がいいところでした。

 生鮮品の市場で目にしためずらしい食材は、山と積まれた羊の顔。口にする自分を想像するだけで、気持ち悪くなってきますが、食も文化、安易にけなしてはダメと自戒。旧約聖書のレビ記11章に「牛や羊は清い食べ物なので、神に認められている。豚は汚れているから認められていない」と書かれているそうです。旧約聖書が書かれた頃は、狂牛病はなかったですからね!?イスラム教のコーランにも「豚はダメ」と書かれているとか。そういえば、豚の顔の丸焼きを見たのは、韓国、中国、台湾、沖縄の市場でした。いずれも仏教の国。
 
 羊の顔も丸焼きにして食べるのかと想像していましたが、イラン人と結婚している恵理子さんによれば、「これでダシをとったスープをキャレ・パチと言います。力がつくので朝食にするんですよ」。ぐうぜん出会った川地恵理子さんの話は次のページで。

 キャチ・パレを食するチャンスはありませんでしたが、他のスープも非常に美味。コンソメのような上品さには欠けますが、トマトとレモンを煮込んだもの、小麦が入ったもの、じゃがいもやレンズ豆が豊富に入ったものなど、種々な素材がまじりあい、「うーん。おいしい!」以外の言葉が出ないほどの味に。

 他にお奨め品はナン。ナンは添加物を入れず、小麦粉と水だけで作る発酵パンですが、練り具合や焼き具合がいいのか、香ばしく実においしいのです。ふっくらしたもの、紙のように薄いもの、楕円形のもの、正方形などさまざま。ナンを売る店で行列している男性をあちこちで見ました。焼きたてナンを家族が待っているのでしょうね。ゴマのペーストや蜂蜜、ハム、野菜をはさんで食べますが、そのままでもグー。今思い出してもよだれが出ます。酸味のきいたヨーグルトも素朴な味です。ドネルキャバブ(鶏肉)とシシキャバブ(羊肉)もお奨め。キャバブは味付けした羊や鶏の薄切り肉を、金棒に紡錘状に巻いたものを炉の前で回転させながら焼いたもの。これを立ち食いせずに、イランを語るなかれと言いたいほど。
 
 パンやミルクがおいしいのは、パンとミルクの起源がメソポタミアやエジプトだからです。パン・ミルクといえば欧米の食べ物のように思ってしまいますが、小麦粉を発酵させてパンを作る技術も、羊や山羊の乳からチーズやバターを作る技術も紀元前3000年頃に、オリエントで発明されたもの。「5000年以上の味」と知ると、オリエントでパンを食べないのは、損だという気がしてきませんか。

感想・要望をどうぞ
イランの旅 1へ
次へ 

ホームへ