スペインの旅 2 スペインの歴史は実に変化に富んでいる。古くはアルタミラの洞窟もある。ローマ遺跡もあればイスラム時代のモスクや宮殿も残っている。ハプスブルク家が繁栄した栄光の時代の面影もある。だから、他のヨーロッパの国より変化に富んでいてワクワク感が大きい。 ローマ帝国はセゴビアの都市整備に力を入れた。セゴビアの旧市街は丘の上にあるので、同じぐらいの高さの水源から、導水路を利用して水を確保せねばならなかった。水源から市街地までは18kmも離れているのでさぞ苦労したと思われるが、土木工事に長けていたローマ帝国にとってはたやすいことだったのかもしれない。 市の中心部に残る水道橋は、その下を人も車も通ることができる。長さは813m、高さは28.5m、アーチは128もある。使われている石は2万個以上。ガイドが「石は釘などで接合されていません。ただ積んでいるだけなんです」と説明してくれた。 訪れた日は3月というのに暑いぐらいの日だった。水道橋のアーチの影が道路にくっきりと映りうっとりしてしまった。この橋の上部には登れないが、脇にある坂道を上ると、また別な角度で眺めることができる。上から見ても下から見ても美しい。
セゴビアがもっとも発展したのはイザベラ女王が活躍した15世紀。女王はここの聖堂でフェルナンド王との戴冠式をしている。白雪姫の城のモデルになったセゴビア城も残っている。モデルといってもおとぎ話の白雪姫が住んでいたわけではない。ディズニー映画の制作の時にこの城をイメージしたらしい。 もう1ヶ所見学した水道橋は、アウグストウス帝の時代に建立されたラス・ファレラス水道橋。スペイン北東部のカタルーニャ州のタラゴナ(スペインの旅1の地図参照)の郊外にある。タラゴナの市内には円形劇場や凱旋門などローマ遺跡が残っているそうだが、ツアーでは市内を見学する時間はとっていない。
セゴビアの水道橋は街の真ん中に残っているが、タラゴナのラス・ファレラス水道橋はちょっと寂れた場所にある。土産物屋もない。ここから市内までどうやって給水したのかなと疑問に思ったが、現地ガイドがいなかったので聞けなかった。全長は249m、高さ27m。2層のアーチ構造になっている。ここでの収穫は、導水路を歩いたことだ。フランスのポンデュガールでも歩いている人を見たが、私達は歩く時間がなかった。ローマ時代の水道橋を初めて歩いたので、印象に残る水道橋が又増えた。 スペインには他にメリダにミラグロス水道橋がある。写真で見るとかなり崩壊している。滅びの美も魅力的だ。その橋のたもとに佇んでみたいものだが、年齢的にもう無理だろう。 水道橋とは関係ないのだが、セゴビア見学と同じ日の午前中に行ったトレドにも簡単に触れておきたい。スペイン滞在が1日しかなければトレドに行きなさいと言われるほどの世界遺産の街だ。 22年前はトレドの高台にあるパラドールに泊まったが、今回は半日観光。古都ゆえに旧市街の趣はなんら変わっているようには思えなかったが、低地から旧市街までエスカレーが設置されていて驚いた。 トレドは西ゴート王国の首都だった。その後イスラム勢力に征服されたが、グラナダよりはるかに早い1085年には、イスラム勢力は撤退。イスラム教、ユダヤ教、キリスト教文化が混じりあっている旧市街は、歩き回るだけで楽しい。エル・グレコがいた町でもある。
(2017年4月2日 記) 感想・要望をどうぞ→ 次(アルハンブラ宮殿)へ スペインの旅1(サグラダ・ファミリア)へ ホームへ |