ポルトガルの旅 6
カトリックの国

 「ポルトガルはカトリックの国なのだ」と痛感する光景に、いくつも遭遇しました。プロテスタント教会は、少しはあるのか、まったくないのか。右写真は、装飾華美なカトリック教会内部で、長いこと祈っていたお年寄り。顔をあげた時に、撮らせてもらいました。

 ポルトガル人が熱狂するのは、3Fだと言われます。フットボール(サッカー)、ファド、ファティマの3つ。ファドは別に書くつもりですが、ポルトガルの演歌のようなもの。さてファティマは?

 ファティマは、中部の海岸沿いにある宗教都市(その1の地図参照)。80数年前はひなびた地でしたが、聖母マリアがここに現れたことから、3大聖地になりました。他の2つの聖地は、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステーラとフランスのルルドです。

 1917年5月13日に、羊番をしていた子供達の前に、マリアが現れたそうです。「そんなのウソに決まってる。2000年前のマリアが話をするなんて」と言いたくなりますが、科学で証明できない出来事は多々、私ごときが文句をつける筋合いでもありません。

 この奇跡は、ローマ法王庁のお墨付き。ミレニアムに向けた2000年5月13日に、法王はじめ内外から100万人もの信者が参拝したそうです。私が訪れたのは8月20日、特別な日でもないのに大混雑。土産物屋には、マリア像とイエス像が山と積まれ、ポルトガルでいちばん俗っぽい地のように思えました。まるで日本の観光地のような雰囲気。さすが3大聖地!?

 とはいえ、真夏の太陽が真上からふりそそぐ中、地面にひざまついたまま礼拝堂に進む信者の姿には、素直に感動してしまいました。バスの中にカメラを置き忘れたので、ひざまつきの写真はありません。左は夫撮影の写真ですが、マリアが現れた場所。火を捧げているところなど、仏教の儀式と似ていますね。

 ファティマの奇跡は、国民の根底にマリア信仰があるからこそ。マリア信仰が多い証拠に、「ノッサ・セニョーラ○○○」という名の寺院を何度も耳にしました。長ったらしくて覚えられない・・と、ぼやいていましたが、ノッサ・セニョーラが「私たちの貴婦人」つまり聖母マリアを指すポルトガル語だとわかってしまえば、次にくるのは地名。ノートルダム・ド・パリのようなものです。

 マリア像が、さして珍しくもない中で、「これは!」と思い、シャッターを切ったのが右写真。右手をあげて、左手をお腹にあてている懐胎のマリア。高貴で上品な顔か、憂い顔に描かれる場合が多いですが、このお顔は、きょとんとしていて親しみやすいですね。「あら!私は、結婚もしないのに、どうして妊娠してしまったのかしら?」。エボラのサンフランシスコ寺院内にあります。

 エボラは、スペインとの国境に近い町(その1の地図参照)。エボラ出血熱で聞き覚えがあります。現地ガイドに「関係あるんでしょう?」と聞いたら、「アフリカのはEbora、ここはEvora」。bとvの違いをムキになって強調しました。まったく無関係だったのです。

 エボラのサンフランシスコ寺院でのハイライトは、「人骨堂」でした(左)。

 天井から壁まですべて骸骨で覆われています。壮観というか気味悪いというか。5000体の人骨を使っている・・の説明を受けました。写真でお分かりだと思いますが、骨の部位を上手に組み合わせていますね。作成した人は、どんな気持ちで作業をしていたのでしょうか。

 わずかのカメラ代を払えば撮影も可能。触ってはいけないなどの表示もありませんし、実にオープンな雰囲気なのです。私には初めての人骨堂だけに、少し興奮してしまいましたが、ツアー仲間数人は、「ローマでも見た、ドイツでも見た」と、さほど珍しくもない様子。 

 人骨を敢えて他人に晒す感覚は、日本人にはないような気がしますが、どうでしょうか。宗教観の違いでしょうか。キリスト教の中でもカトリック特有のものでしょうか。

 もうひとつ、ちょっとついていけないのは、やたら目にする、イエスの磔刑像です。教会の高所からは、必ずその姿でわれわれを見下ろしていますね。あんな姿で眺められたら、誰でも敬虔な気持ちに陥ってしまいそうです。

 磔刑像は、カトリックの国どこでも見られますが、ポルトガルでは、ゴルゴダの丘を登るシーンを再現した彫刻も、あちこちで見ました。

 ブラガ(その1の地図参照)という北部の宗教都市に、ボンジェズス教会があります。階段を上って教会にたどり着く過程で、ゴルゴダの丘に向かうイエスの苦悩を同化できるようになっています。階段の途中の小屋では、場面ごとのリアルな彫像群を見ることが出来ます。右は、道路に倒れているイエスを無理矢理立たせようとしている場面。

 字が読めない人が多かった時代には、宗教画や、こういった彫刻類が威力を発揮したことでしょう。(2003年10月16日 記)

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