北京の旅 7
伝統が息づく胡同
 

 景山公園の北側一帯に、胡同・フートンと呼ばれる伝統的な家や路地が残っています。中庭を四方で囲むようにして建つ四合院と呼ばれる住居は、建物が壁の役目をしているので、内部をのぞくことは出来ません。同じ中庭でも、スペインの中庭・パティオは、開放的。楽しげに談笑するスペイン人の様子が見えたのですが。

 庶民の住む町胡同が城の側に形成されたのは、北京が首都機能を持つようになった元の頃。城と胡同が接近していたために、朽ちかけた壁の隙間から、故宮のオレンジ色の甍が見えるという不思議な空間が、今でも残っているのです。
 北京の街そのものも、大きな城壁で囲まれ(現在はほとんど消滅)ていましたが、住居も四方から囲まれていました。二重に守られた中庭には、どんなドラマがあるのでしょう。旅人には覗けない世界でした。

 中庭は見えないけれど、路地は生活感にあふれています。人民服を着たおばあさんが座るそばで、子供達がボールけりや隠れんぼ。七輪での煮炊き。雑多な臭い。消えつつある胡同を少しでも見ることが出来たのは幸いでした。次に北京を訪れても、ノスタルジーあふれるこの地区が残っている保証はないのです。

 北京は古い家を壊して、衣替えの真っ最中。98年には、瓦礫の山と建築中のビルの鉄骨がむき出しになっていました。化粧直しが終わった直後の99年時も、中心地を離れると、同じようにほこりっぽい瓦礫の山。古いものを一掃しようと躍起になっています。もったいないと思わぬでもありませんが、似たようなことはどこの国でもやってきたこと。他国の人間が言うべきことではありませんね。

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