南フランスの旅 10
炎の画家・ゴッホ 後

 ゴッホがプロヴァンスに滞在したのは2年余ですが、そこで描かれた絵は200点ほど。単純計算でも、3〜4日に1作を仕上げています。「ゴッホの絵だ!」と、誰もがわかる作品のほとんどは、プロヴァンスが舞台。
 
 にもかかわらず、ここには美術館どころか1枚の絵も残っていません。近所の農婦などに気軽にあげていたそうですが、自分の耳を切り落とすような男の絵を大事にする人は、いませんからね。生前に売れた絵は、たった1点、書評もたった1編。無名のままで、37歳の生涯を終えたのでした。

 彼を邪魔者扱いにしたアルルも、今はゴッホさまさま。本物が残っていないので、ゆかりの場所には、絵の写真と説明のパネルが立っています。彼はローマ遺跡には興味を示さなかったのか、円形闘技場の絵が1枚あるだけ。主題は、人物、ひまわり、麦畑、糸杉、建物・・です。

 左は、オランダのクレラー・ミュラー美術館にある「夜のカフェテラス」。1888年9月作。
 ちなみに、クレラー・ミュラー美術館は、93点もの作品を所蔵。

 右は110年後の「真昼のカフェテラス」。当時のカフェがそのまま残っています。同じ黄色に保っているものの、絵の方がずっと素敵ですね。110年後の写真は、モデルも悪いし・・。ここでカフェを飲む時間がなく、残念でした。




 左は「ラングロワ橋」通称「アルルの跳ね橋」です。1888年3月作。クレラー・ミュラー美術館所蔵。

 跳ね橋の上には幌馬車が描かれています。隔世の感がありますね。

 右上は現在の跳ね橋。これは、ゴッホが描いた橋ではありません。実際のラングロワ橋付近は、近代的な街並みに変わってしまったので、当時の面影を残す場所に、観光用に作ったもの。そこを有り難がって詣でる日本人がたくさんいます。もちろん私もその一人。

 ゴッホファンがいちばん多いのは日本だとか。ちなみにオランダのアムステルダムにある「ゴッホ美術館」を検索すると、日本語も出てきますよ。私も、ゴッホは大好き。何度も日本で開かれた展覧会には、ほとんど足を運び、アムステルダムの「ゴッホ美術館」では、ゆっくり鑑賞しました。もっとも、200点も所蔵しているので、鑑賞したのはごく一部です。

 特に、くねくねした糸杉の絵がお気に入り。糸杉を初めて見たトルコで「あ!ゴッホの糸杉だ」と思わず叫んでしまいました。プロヴァンスでは、突風のミストラルを避けるために、糸杉を植えるのだと聞きました。強風に強いのだとか。プロヴァンスを代表している風景には、こんな御利益もあったのです。

 プロヴァンス以前に描かれた絵は、話題の「農婦」に見られるように、暗い色彩。ゴッホ特有のうねりのある大胆な筆遣い、絵の具の塗り重ね、黄色の多用など色彩の激しさは、南フランスの明るい太陽のもとだからこそ生まれたのだと、確信に近いものを感じました。プロヴァンスを訪れて、はじめて実感となりました。              (2003年4月2日記)

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