南フランスの旅 11
セザンヌ

 戦後間もない頃に、父が世界美術全集を買ってくれました。印刷も紙質も悪く、今となっては鑑賞に堪える代物ではありませんが、暇があると、めくっていたものです。画集を眺めていた貧しい少女が、50年後に画家の故郷を訪問出来るとは・・。良い時代になったのでしょうね。

 アルルがゴッホの町ならば、エクス・アン・プロヴァンスはセザンヌの町。銀行家の父を持つセザンヌは、生活には困りませんでしたが、絵を描く希望は認めてもらえず、大学は法律科。中退してパリに出るも、生涯のほとんどをエクスで過ごしています。右の写真は、エクスを代表するミラボー通り。真夏なのに、街路樹のおかげで、涼しかったですよ。

 ゴッホと同様、生存中の評価は低く、彼の絵は地元では大事にされなかったと聞きます。もらった人は、窓から放り投げたり、焼いてしまったり。エクスのどこからでも見えるサント・ヴィクトワール山だけで60点も描きながら、エクスには彼の名を冠する美術館はないのです。

 でも今は、セザンヌさまさま。観光局最大の目玉はセザンヌで、生活した場所や通った学校の道路には、Cezanneの「C」のプレートが打ち込まれています。

 この道程は「セザンヌの足跡」コース。独自のパンフレットもあるという気の入れようです。他に「セザンヌの風景」なる散歩道も整備され、それを辿ると、彼が風景画を描いた地に立つことが出来るそうです。

 私たちが訪れたのは残念ながらごく一部。上の「C」のプレートは、父親が開いた帽子屋路上にあったもの。父親は、この商売で財をなし、銀行を買い取りました。

 左は、カフェ「レ・ドウ・カルソン」前の路上の似顔絵描き。椅子だけが見えるカフェは、セザンヌお気に入りでした。私も、カフェオレで一服。

 右上の写真は、セザンヌのアトリエ庭にあるセザンヌ像。夏草が生い茂るワイルドな庭を散策出来ます。

 アトリエ内部は、撮影禁止。太陽光がふりそそぐ室内には、静物画の小道具である、壺、かご、椅子、イーゼルが雑然と置かれ、今し方までここで描いていた雰囲気を上手に残しています。でも、本物の絵は一枚もありません。


 左は絵。右が実際のサント・ヴィクトワール山。エクスを走行中にどこからでも見えますが、角度によってまるで違います。

「絵と同じ角度で見たい」と、ガイドに頼んでおいたので、良いアングルの写真が撮れました。

 絵の山は、周囲の緑と一体化して色彩を帯びていますが、実際の山は、石灰岩の白っぽい岩肌。名前にサントがつくのも道理。神々しさを感じる山でした。

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