南フランスの旅 13
シャガール

 マチスが84歳まで長生きした・・と前項で書きましたが、シャガールは97歳。ちなみに、同じくプロヴァンスで晩年を過ごしたピカソは91歳、ルノワールは78歳・・と、みなさん長生き。南フランスの気候がよほど良かったのでしょうね。ゴッホは自殺さえしなければ、数十年前には生存していたのだ・・と詮無いことを、つい思うのでした。

 シャガールは1887年にロシアで生まれました。ユダヤ人でした。ロシア革命やユダヤ人に対する迫害など種々の理由はあったと思いますが、36歳の時にパリに移住。のちにフランス国籍も取得。1985年に、プロヴァンスのヴァンスで亡くなりました。

 私が日本以外で初めてシャガールの作品を目にしたのは、パリオペラ座の天井画。重厚な建物と、夢のようなフワフワした絵が、アンバランスのように見えながら、実にしっくりしていたことを思い出します。シャガール76歳の作品でした。

 ニース市内にある右の写真の美術館の正式名称は、「マルク・シャガール聖書のメッセージ国立美術館」。名前の通り、聖書の内容が描かれている作品がほとんどです。すくっと立っている木は、糸杉。淡い色の木は、オリーブ。

 ここの見学は、南フランスツアーのどのコースにも含まれているので、人気スポットなのですね。聖書の題材なのに、ノンクリスチャンが大多数を占める日本人が、押すな押すな。ちょっと異様ですよ。もっとも私もその一員ですから、なんとも言えませんが。日本語のパンフレットもあります。

  ここの美術館は、非常に明るいうえに、撮影自由なので、ほとんどの作品を撮ってきましたが、2点だけお目にかけます。

 聖書のメッセージ美術館だけあり、「人類の創造」「楽園」「楽園を追われたアダムとイブ」「ノアの方舟」「ノアと虹」「アブラハムと3人の天使」「イサクのいけにえ」「ヤコブの夢」「ヤコブと天使の戦い」「燃える柴の前のモーゼ」「岩を打つモーゼ」「律法の石版を受けるモーゼ」など、絵やステンドグラスは、すべて旧約聖書の内容です。

 左の絵は「楽園」。エデンの園でアダムとイブが、天使や動植物と楽しく暮らしている光景。

 


 左の写真は、コンサートホールを飾るステンドグラス。右は天地創造の最初の4日間の様子。惑星や火の玉が描かれています。ちょっと明るくなった左は、5日目と6日目の楽園の平和な風景。3番目の窓もあったのですが、一枚の写真に入り切れませんでした。もちろん天地創造が終わった7日目を描いています。

 神の選民であるユダヤ民族の歴史を通して、人類全体の歴史を描こうとしたメッセージが読みとれます。ユダヤ人ならではのシャガールのメッセージでしょうか。(2003年5月2日 記)


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