南フランスの旅 14
ブイヤベースとマルセイユ

 「マルセイユに立ち寄るならブイヤベースを食べねば・・」と、旅の前から楽しみにしていました。ブイヤベースは、言ってしまえば「魚のごった煮」。もともとは漁師の食べ物でしたが、プロヴァンスを代表する料理に成り上がったというわけです。

 アナゴ・カサゴ・カナガシラは必ず、カレイ・アンコウ・カニ・エビは適宜。オリーブオイル・白ワイン・サフランは必需品。他にタマネギ・ニンニク・月桂樹の葉・トマト。プロヴァンスを代表する食材の集合体というふれこみです。

 期待の「ブイヤベース」を口にしたのは、マルセイユの旧港からほど近いレストラン街。ヴァカンス真っ盛りとあって、どのレストランも観光客であふれかえっていました。

 まず殻付き生ガキの大盛りがドーン。松島湾の生ガキを食べ慣れている私は、思わず生唾。でも待てよ。今はAugust。Rがつかない月。「カキはRがつく月、9月から3月までしか食べてはいけない」と、長いこと親に言い聞かされていたので、旅の途中で下痢でも起こしたら困るなの思いがよぎり、どうしても手が伸びません。

 添乗員に「これまで中毒を起こした人は誰もいませんから大丈夫」と言われても、最初の一人になるやもしれず、恐る恐る2個だけ食べました。何十個も食べた人がいましたが、結果的にはセーフ。でも外国で生ガキにやられた話はよく聞きます。

 次はいよいよ本場ブイヤベース。サフランの黄色が食欲をそそります。ところが!一口含んだとたん、数人の女性が異口同音。「何これ!生臭いし、美味しくなーい」。

 男性はこういう場合でも本音を言わない習性が身に付いているのか、「美味しくない」など言いませんが、たいていのオバサンは声高に叫びます。ツアーでの食事に期待してはいけないのだけれど、楽しみにしていただけにガッカリ度が大でした。

 「フランス料理でも、日本で食べる方が美味しいわねえ」と、フランス人が聞いたら怒りまくるせりふで締めくくったのでした。フランスを何度も自由に歩き回っている甥たちに聞いても「そんなにウメエもんじゃねえ」の答えでしたから、ブイヤベースの響きに騙されませんように。

 それでも楽しい会話で食事を終えて、バスが留まっている所まで向かいました。港に停泊している船にライトアップされ、なかなかの雰囲気。ワインの酔いも海風がしずめてくれて、気持ちよくそぞろ歩き。

 そんな時に前方を歩いていた同行の若い女性めがけて、ひったくりが現れたのです。いち早く気づいた夫が、火事場の馬鹿力を発揮してダッシュ。事なきを得ました。「若くないんだし、逆にやられる事もあるんだから、見て見ぬふりも必要よ」と、釘をさしました。

 アルジェリアは、マルセイユと目と鼻の先。フランスの植民地だったので、フランス語がしゃべれる利点があり、マルセイユに流れてくるアルジェリア人が多いとか。サッカーのフランス代表ジダンもアルジェリアからの移民ですが、ジダンのような成功者はまれ。経済的格差が犯罪を生む構図を、目の前で見てしまいました。

感想・要望をどうぞ→
南フランスの旅 1へ
次へ
ホームへ