南フランスの旅 7 
モンテ・クリスト伯の牢獄 前

 南フランスの旅でいちばん楽しみにしていた訪問先は、エドモン・ダンテスことモンテ・クリスト伯の牢獄でした。

 「モンテ・クリスト伯って小説の主人公でしょ。そんな牢獄がある筈ないじゃない」の侮蔑に満ちた声も聞こえますが、実在しているのです!!
 マルセイユから小型船で20分ほどのイフ島に、ダンテス入所の牢獄が残っています。右の絵葉書は、イフ島と牢獄の空撮。

 子供向けに書かれた「巖窟王」が忘れられず、新潮社の黄色いハードカバーの世界文学全集を、初月給で買いました。一度も読まない本もあるのに、「モンテ・クリスト伯」は、何度手にしたことか。

 アレクサンドル・デマ(1802〜1870)は、大衆向け小説ばかり700作も書きました。「モンテ・クリスト伯」も通俗小説の見本のように言われていますが、頁をめくるのがもどかしいほどの面白さ。帰国後に再々読し、新たな面を発見しました。

 ナポレオンがエルバ島を脱出し、ワーテルローの戦いが始まる頃のフランスが舞台。主人公エドモン・ダンテスは、ナポレオンの脱出に一役かったという濡れ衣を着せられます。復讐あり、ロマンあり、冒険あり。ご存じない方のために簡単なあらすじを。

 マルセイユに住む優秀な船乗りエドモン・ダンテスは、幸せ絶頂の婚約式の日に、無実の罪でイフ島の牢獄へ送られます。その裏には、彼の栄達や幸せを妬む友人・知人、自分の身を守ろうとした検事がいました。

 絶望の日を送っていたある日、脱出すべく抜け道を掘っていたファリア神父に出会います。神父は、方向を間違えたために、海ではなくダンテスの部屋に。左の写真は、牢獄の通路からの海の眺め。ダンテスや神父のような極悪人用の牢獄から、海は見えません。

 神父は、ダンテスに学問を教え、宝の洞窟のありかを示す地図も与えました。神父が病死した時に、ダンテスは身代わり死体になって脱獄に成功。14年間の獄中生活でした。宝を手に入れたダンテスは、船乗りシンドバッド、ブゾーニ神父、モンテ・クリスト伯などに変装し、自分を牢獄に追いやった人物を次々と消していきます。何度読んでも嫌にならないのは、復習劇でありながら、陰惨な殺人場面がないからかもしれません。

 デマは、実際にこの島を訪れた時に抜け穴の存在を知り、小説のヒントを得たということです。大ヒット後に、ダンテスとファリア神父の部屋が用意され、観光スポットに。再び訪れたデマは、作者と知らない土産物屋のオヤジから「神父が作った魚の骨製のペン」を売りつけられた・・というウッソー!の逸話も聞きました。

 写真の右下に、小さな穴があるのがおわかりでしょうか。これがダンテスと神父の部屋に通じている穴です。小説では、何年もかかって抜け道を掘ったことになっていますが、ここではこの穴をはさんで隣どうしの部屋。どうせなら、小説に忠実にしてもらいたいものだと思いますが、「最初に穴ありき」。小説が出来たのは後のことですから、仕方ありませんね。

 長くなりました。続きは「後」で。

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