行きあたりばったり銅像めぐり
 37回

 伊達政宗 その2

 仙台駅構内にも、小振りの政宗像がある。(右写真)。待ち合わせに使われるらしく、像を囲んで人垣が出来ていた。ブロンズのように重々しくないが、青葉城(仙台城)まで行く時間がない人でも、気軽に政宗に会える。

  20年間住んでいた仙台では、伊達という名を、日常的に耳にしていた。上級生にも下級生にも「伊達さん」がいた。

 実家の住所・川内三十人町も城下町ならではだ。中心街からはずれていたので、広瀬川の川外がふさわしいが、城を中心に考えると川内になる。足軽30人が住んでいたので、町名に残った。郷土史家のMさんが、「残念ながら、ここは伊達さまの上級武士ではなく、足軽が住んでいたんです」と話してくれたことがある。

 仙台は、いまだに、伊達政宗に頼らざるを得ないところがある。仙台を離れて40年になる私が言うのはおかしいが、外部から見ているからこそ、感じることもある。

 最近の例では、Wカップのために新しくできた宮城スタジアムの屋根は、政宗の三日月の兜飾りをデザインしたものだ。左(博物館のパンフレットを借用)のように、政宗の具足は、全体が黒で三日月の兜飾りは金。伊達男の名にふさわしく、シンプルでしゃれているが、サッカー場の屋根に使われるとは、政宗も苦笑しているに違いない。


 以前は、名物でもなんでもなかった「牛タン」にもその名がついている。(左写真)。どう命名しようと構わないが、伊達の殿様が牛の舌を召し上がったとは考えられない。「伊達の太鼓」(菓子)、「伊達あられ本舗」など、思いつくだけでも、伊達と名がつくものは多数ある。

 私がいた頃は、売っていなかった銘菓「萩の月」の店頭でも、政宗がガラスのケースに入っていた。(右写真)。

 この像は片目である。政宗は、幼少の頃に疱瘡にかかり右目がつぶれた。「独眼竜政宗」と言われるゆえんだ。でも彼は「肖像には両目を描くように」と言い残しているので、片目の像は少ない。

 政宗から数えて18代の泰宗氏は、市内に住んでいる。17代は東京暮らしだったが、18代は仙台を拠点にさまざまな活動をしている。東北放送に勤めていた友達Iちゃんは、「仕事でお宅を訪ねたことがある」と言っていた。2人の子どもはお嬢さん。養子でも貰わない限り、途絶えてしまいそうだ。

 例のミニ観光バス「ループル仙台」で最初に降りたのは、伊達家3代の霊を祀る御霊屋。政宗は瑞鳳殿、2代忠宗は感仙殿 3代綱宗は善応殿に祀られている。青葉城趾よりも、伊達の殿様を感じる一帯である。長い参道の両脇は、杉木立。御霊屋は手つかずの森の中にあり、厳かな雰囲気がただよう。

 仙台城の大手門や櫓同様、ここも昭和20年の空襲で全焼した。瑞鳳殿は昭和54年、他のふたつは昭和60年に再建された。豪華絢爛の桃山様式だが、いずれも新しい。

 再建された時に、御霊屋を発掘調査した。遺骨、副葬品、発掘の様子を記録したヴィデオは、「瑞鳳殿資料館」で、見ることが出来る。HPを覗くだけでも、かなりのことは分かる、
  
 政宗の遺骨を調べた結果、彼が鼻筋の通った面長の貴族顔をしていたことがわかった。身長は当時の平均の159.4p、血液型はB型。こんなデータを知らされると、がぜん、身近な人物になる。歴代の大河ドラマの中で、最高の視聴率をとったのは「独眼竜政宗」だと聞いている。政宗を演じた渡辺謙は、貴族顔ではないが、凛々しくて良かった。

 瑞鳳殿入り口に「仙台藩志会」の名で、大きな花が飾ってあった。(左上写真)。御霊屋にも、「伊達家18代当主 伊達泰宗」の名の花輪があった。(左下写真)。両方とも生花だ。いつも生花を飾っていたら、入館料などすぐ消えてしまいそうだ。

 こういう時黙っていられない私は、掃除をしている男性に「いつも生花を飾っているのですか」と聞いた。「なあに、政宗の命日が5月24日だったんですよ」。これで納得。命日から4日後の訪問だった。

 ついでに聞いてみた。「泰宗氏のおたくは、広大なお屋敷ですか」「そんなことありませんよ。普通の家です」。明治になって藩主を剥奪されたとはいえ、伯爵の身分をもらった。しかし、終戦後は、特権がなくなったのだから「普通の家」に住んでいても、何ら不思議はない。

 ところで泰宗氏について検索したら、自分で発行しているHPがあった。昭和34年生まれの若い当主だ。

 専門は、「古代文化財(漆工)の修復と埋蔵遺物の環境調整による科学的保存」とあった。仕事は、瑞鳳殿資料館館長、仙台市博物館嘱託、仙台藩志会総裁、東北放送文化事業団理事・・など、お殿様にふさわしい肩書きをたくさん持っている。

 いまだに藩志会なるものがあり、殿様の末裔が、それらしい生活をしている。伊達さまの城下町は、健在である。(2004年7月13日 記)
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