行きあたりばったり銅像めぐり
  61回

  大石内蔵助 その2

 東京港区高輪にある泉岳寺の大石内蔵助の銅像は、2年前のこの時期に書いた。今回は、赤穂浪士のふるさと「赤穂市」にある銅像を書いてみたい。

赤穂駅 2006年12月10日に、赤穂市に行ってきた。旅の目的は難波の宮と姫路城探訪だったが、姫路と赤穂は電車で30分ほど、赤穂に寄らない手はない。おりしも義士祭を4日後に控えていた(左)。

 しかも赤穂には、何10年も会っていないが、若い知人Yさんがいる。姫路のホテルから電話をしたら「大丈夫ですよ〜」の明るい声が響き、案内してもらうことになった。


観光サポーター 赤穂市は赤穂浪士抜きにしては語れない。私のふるさと仙台が、観光ではいまだに「伊達政宗」に頼っていると同じように、赤穂の観光も大石内蔵助で保っている。Yさんの口からも「よしおちゃん」の言葉が出たが、名刺大の「あこう観光サポーター」(左)にも、「よしおちゃん」が案内すると書いてある。

 浅野家は、「松の廊下」の刃傷から、わずか45日後の1701年4月19日に赤穂城を明け渡し、その後「お家再興」は適わなかった。にもかかわらず、代わりに入城した藩主の名前など知ろうともしないし、銅像もない。

 ところが、大石内蔵助の像は、少なくとも4体あった。木像を含めれば数知れないだろう。なぜか浅野内匠頭の銅像は見なかった。赤穂における「よしおちゃん」の人気ぶりがうかがえる。

 もっとも「赤穂浪士」の人気は、赤穂だけにとどまらず、東京の泉岳寺では年中線香が絶えないし、300年以上経た今でも、芝居とテレビの定番になっている。NHKの大河ドラマ44作のうち、赤穂浪士関連は4作(「赤穂浪士」「元禄太平記」「峠の群像」「元禄繚乱」)もあるという。近所に住むHさんから、「赤穂事件と忠臣蔵」-日本人の特性を考える−という講話を聞いたばかりだ。

 「吉良上野介こそ名君だったのに、悪者呼ばわりして気の毒だ」、「忠臣蔵の心情が理解できなければ日本人ではないという風潮は見直すべきだ」「馬鹿殿のために、若い命を落とした浪士が気の毒だ」の声も、最近は高まっている。ここでの私は、銅像を紹介するにとどめたい。

 次の3体は、赤穂駅から徒歩で回れる距離にある。

駅前の内蔵助像 大石神社の内蔵助像 大石神社の内蔵助像
赤穂駅の広場にある。芝居などに描かれる討ち入り姿。実際は、お揃いの法被など着る余裕はなかったと言われる 大石神社の参道両側に赤穂義士の面々が並んでいる。中国の兵馬俑と同じ材料を使い、最近作られた像。寄贈者として子孫の名が刻まれている。この像には、11代目後裔大石浩史の名かあった。 左と同じ、大石神社の境内にある像この神社は、大石内蔵助の邸あとに、大正元年に作られた。家老らしく、裃姿である。


赤穂中心部地図 左は、赤穂の観光パンフをコピーした地図。地図上で駅からいちばん離れている赤穂城でも徒歩20分ぐらいだから、この範囲は、充分歩いて回ることができる。

 紺の字の@は、息継ぎ井戸。早水藤左衛門と萱野三平は、4昼夜半、早駕籠に揺られて、城下に到着。この井戸の水を飲んで一息ついたという。

 Aは花岳寺。初代藩主が浅野家の菩提寺として建てた。泉岳寺と同じように、宝物館、義士達の墓がある。

赤穂城趾 Bは大石邸長屋門。大石邸は畳数にすると308畳もあったという。長屋門だけは1729年の火災からも免れた。

 Cは内蔵助の邸跡に建てられた大石神社。意外にも大正元年の建立。

 Dは赤穂城(右)。赤穂城跡公園は、「日本の歴史公園百選」に選出されたばかりである。

赤穂御崎の内蔵助像 市の郊外には、「塩の国」や「海洋博物館」がある。時間が限られている私達には徒歩では無理だ。あきらめていたのだが、Yさんのご主人が車で回ってくれた。

 浅野と吉良の怨恨は、塩田をめぐるものだったという説もあるぐらい、赤穂藩の主産業は塩だった。海沿いに、かつての塩田を復元している。小学生が塩水をかき回して塩を作っていた。

 次に向かったのは「赤穂御崎」。瀬戸内海国立公園になっている。目前に小豆島や私が名を知らない島が連なっていた。この風光明媚な公園に、4体目の銅像(左)があった。これがいちばん立派。

 元禄15(1702)年10月に、内蔵助は江戸に向かって京都を出発している。いよいよ討ち入りを決行するための出発だ。その「旅立ち」の像。

 この像を見た後に、「早駕籠」の道を通って、新幹線の駅・相生駅まで送ってもらった。早駕籠の道は、もちろん「お家の一大事」を知らせるために早駕籠が通った道だ。峠には、早駕籠の像があった。

 赤穂で過ごしたのは4時間に過ぎないが、Yさんご夫妻の案内で、盛りだくさんの赤穂の姿に触れることができた。(2006年12月20日 記)


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